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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

タイムトラベル化学反応

あたかもタイムトラベルしているかのような現象はたくさんあります。聞いた話によると、お酒を飲みすぎるとそのときは普段より元気になるのですが翌日は元気がなくなるそうです――元気のタイムトラベルです。借金は未来の自分からお金をタイムトラベルさせるようなものです。タイムトラベルものの映画だって、スクリーンに映し出される情報のパターンは本物のタイムトラベルのそれと同じような性質を持つでしょう(もちろん、きちんとまじめに計算したタイムトラベルのシミュレーションならなおさらです)。ここでは、もっと視野を広げてみます。化学反応にタイムトラベルっぽいものはあるでしょうか?


未来に分解される

このシミュレーションを実行すると、あたかもタイムトラベルのような現象が起きるのがわかります。次の図のように、最初赤い物質が増え、つじつまを合わせるように周りの赤い物質が減るのです。まるで、赤い物質が未来から流れてきているかのようです。

もちろん、じっさいにここで起こっているのは化学物質の分解と合成であり、ほんとうの意味でのタイムトラベルではありません。しかし合成と分解をワープの入り口と出口とみなせば、未来から物質が流れ込んできているとみなせなくもありません。このシミュレーションでは、物質が増えた少しあとに、周辺で分解が起きるからです。未来にワープの入り口があり、現在に出口があるのです!タイムトラベルです!

おもしろいことに、この考え方が正しいとすれば、分解が遅れれば遅れるほど未来の物質を持ってこれることになります。普通、「遅れる」という言葉は「未来」という言葉とは余りなじまない印象があるかもしれませんが、実際には過去へのタイムトラベルが遅れれば遅れるほど、やってくるものは未来のものになるのです。もし人類が「初めて作られるタイムマシンを今日に送り込む」条約を今日結んだとしたら、タイムマシンの開発が難航すれば難航するほど、未来のタイムマシンがやってくることになるでしょう。ある意味、怠け者であれば怠け者であるほど未来の情報が手に入るのです。なにしろ怠け者は部屋を掃除しろと言われても「いつかやるよ」と答えるばかりで、きっと掃除することになるのはかなり未来のことになるはずです。怠け者は遠い未来を見通しているのです!

未来から物質を運び込む条件

しかし、これがタイムトラベルだというのなら、未来から物質がやってくる条件は何でしょう?私も出来ることなら未来に現れるであろう万物の理論を送ってもらいたいですが…確実に現在の私に送ってもらうにはどうすればいいのかわからないので、絵に描いた餅なのです。しかし、タイムトラベルのアナロジーである化学反応でなら、やり方によっては送ってもらえるかもしれません。

化学反応タイムトラベルでは、未来から物質が送られてくる条件は、外部からの物質の追加です。面白いことに、外部から持ち込んだ物質であるにも関わらず、このシミュレーションではそれを未来の自分自身から送られてきた物質だと勝手に解釈して、つじつまを合わせようとするのです(つまり、周辺の物質を減らすのです)。今「解釈して」と書きましたが、そのようなプログラムを明示的に書いたわけではなく、化学反応をシミュレートすれば勝手にそうなるのです。プログラムのコード中には、タイムトラベルのタの字もありません。単に物質が合成と分解をしているだけです。しかしそれは物質の瞬間移動と等価です。そのタイミングにズレがあればタイムトラベルと等価なのです。

異物の同化

外部から持ち込んだ物質を自分の未来から送られてきたものと見なすというのは、面白い話です。通常、哲学的に美しいシミュレーションを作ろうとしたら、外部から影響をあたえることはできません。プログラマが一度「光あれ」したら、その後は手出し無用です。途中で書き換えることができてしまったら、それは1つの独立した人工宇宙ではなく、ただのコンピューターゲームになってしまいます。しかし、今回のようなケースでは話が違います。未来から物質がやってくるのなら、「外部からの操作ができる」というのと、「一個の独立した宇宙である」というのは両立できます。外部からの変更を、自分の未来からのタイムトラベルの結果として解釈すればよいからです。

このことは、シミュレーション芸術を作る上で役に立つでしょう。他の世界へ行ってみたいというのはよくある夢で、シミュレーションはその夢を叶えてくれる一つの手段です。異物の同化トリックは、そのシミュレーションの哲学的な価値を高めるのに役立つでしょう!まあ、あくまでも哲学的な価値であり、普通のプレイヤーがこのトリックで「わあすごい」という反応をすることはまず無いでしょうが…。

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