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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて
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これまでに、細菌が走化性によってエサに集まるシミュレーションを作りました。ここでは、それを細菌の細胞内で実現している化学反応のシミュレーションをします。
Wikipediaの走化性#シグナル伝達で述べられているように、菌がエサまで泳ぐという単純な行動でさえ、MCP, CheA, CheB, CheR, CheW, CheY, CheZといったたくさんの種類の化学物質が関わっています。ここではそのうち、MCP, CheAの2つに注目して大雑把なシミュレーションを行います。
MCPは大腸菌の細胞壁についているタンパク質で、環境中の糖などの濃度センサーです。ただし、一定の速度でメチル基がついていき、それにより感度が下がっていきます。(人間も甘いものをずっと食べているとはじめの美味しさが失われていくものです。)
CheAは主に2つの役割を持ちます。一つは大腸菌の進行方向をランダムに変えるというもので、もう一つはMCPのメチル基を取り除いて感度をリフレッシュするというものです(現実の大腸菌ではこの2つを直接行うのは別のタンパク質ですが、間接的にはCheAが行うと言っても過言ではありません)。
CheAがこの2つを行うのは、MCPに糖がついていない時です(あるいは糖があるのに飽きた時です)。つまり、環境中に糖がない時ランダムに方向転換し、糖の感度をリフレッシュするのです。
人間も空腹な時はお菓子がどこかにないか探し回りますし、お菓子を食べたときの美味しさも大きいものです。
メチル基はMCPの感度を弱めます。MCPに糖が付いているとまっすぐ進み続けるのですが、メチル基によって感度が下がると糖がついているにもかかわらず方向転換します。つまりメチル基によって糖に飽きるわけです。
メチル基は一定の速度でMCPについていくので、飽きるのは時間の問題です。メチル基を取り除くには、糖のない状態で一定時間過ごす必要があります。糖がない時CheAが活動し、メチル基を取る化学反応を促進してくれるのです。
糖の濃度:大腸菌の周囲の糖の濃度を設定します。
これは走化性の化学反応シミュレーションです。大腸菌が糖の多い方へ泳ぐ時、このような化学反応が起きています。
糖の濃度を上げてみましょう。すると、MCPのメチル基も増えていきます。メチル基は飽きを表すので、これは大腸菌が糖に飽きたということです。ここで注意してほしいのは、メチル基の上昇は、糖の濃度の上昇より少し遅れているという点です。これが意味するのは飽きるまでの時間の猶予があるということであり、その間大腸菌は直進するのです(もしもメチル基が糖の濃度に即座に追いついてしまったら、大腸菌はどこかへ向かうということが出来ず、常にランダムな泳ぎをし続けるでしょう。何事にも一瞬で飽きるということだからです)。
面白いのはランダムな方向転換を引き起こすCheAです。CheAは糖の濃度そのものではなくその「変化」に反応します。糖の濃度を少しずつ上げてみましょう。すると、CheAの活動はその間だけ下がります。一方、濃度を最大値にしおわると、CheAの活動は通常のレベルに戻ります。どうしてこうなるのかと言うと、糖には飽きるので、糖が常に上昇し続けていないとCheAの活動は活発にならないからです。CheAは世界が良い方向に変化している時のみ、方向転換の頻度を下げるのです。