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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

世界五分前仮説と中国語の部屋

世界五分前仮説と中国語の部屋は間違っている!!

この記事では有名な次のふたつを否定しようと思います。
一つ目は世界五分前仮説。
「この世界は五分前に作られた。五分より前の全人類の記憶は全て偽物」という仮説です。
ラッセルは本気でこんな事を言ったわけではありませんが。
多くの人は「これはおかしいが否定することも出来ない」と誤って考えています。
違います。
否定は可能です。

もう一つは中国語の部屋です。
「ある部屋(中に人がいる)が中国語を理解しているかどうかなど、外から見てもわからない。その部屋は一見中国語を理解しているかのように見えるが、内部ではマニュアルを見ているだけだから本当は理解していないのかもしれない。一見した理解など何の気休めにもならない」というものです。
こちらはすでに多くの批判にさらされていますが、とどめを刺す作業の助けとなればと思います。


さて、この話を聞いて、「なぜこの2つなのだろう?」と思った方もいるでしょう。
実はこの2つは両方とも、「一見凄そうなものの正体がハリボテだった」ということを言っているのです。
一見違う分野の違う理論に見えますが、だいたい同じです。

この2つが間違っている理由はどちらも同じです。
それは、「それらしい偽物を作るプロセスそのものが、本物となる」からです!!

世界五分前仮説は間違っている!!

「世界は五分前に作られたのだ!」
と言われて気軽に反論できる人は多くありません。
なにしろ「10分前にアイスを食べた記憶をちゃんと持っている、5分前に作られたはずない」と言おうものなら、
すぐに「それは五分前に「10分前にアイスを食べた」という記憶を埋め込まれただけだ」と言われてしまうからです。

よって、世界五分前仮説の方はよく次のように受け取られることがあります。
「世界五分前仮説は変な仮説だけど、否定しようがない。反証は不可能である。」と。
しかしこれは間違っています。

世界五分前仮説は間違っています。
なぜなら世界は五分前に作られることは決して無く、五分前までに歴史のつじつまを合わせるための準備が必要だからです。
そしてその準備そのものが、私たちの歴史を形作るのです。

具体的に考えましょう。
この宇宙の外側に謎の知的生命体Xがいて、この世界を5分前に作ったとします。
しかしそのためには世界に矛盾が生じないようにしなくてはなりません。
ある人は朝に目玉焼きを食べた記憶を持っているのに、その人の妻はその人が目玉焼きではなく焼き魚を食べていたという記憶を持っていたら困りますよね。
その世界が偽物だとすぐに検証できてしまいます。

これは重大な欠陥です。
なにしろ、「世界が五分前に作られたというのは否定のしようがない」というのが話しの肝なのですから。
世界のほころびが見つかってしまえば、世界五分前仮説の大ピンチです。

そこで謎の知的生命体Xは、矛盾が生じないように、つじつま合わせをする必要があります。
その世界が本物だとすべての知的生命体に思わせるような世界を作り出すのです。
それにはどうすればいいでしょうか?
そう、コンピュータで計算、歴史をシミュレートするのです。
宇宙の始まりから、五分前まで。

すると、世界五分前仮説の意味は変わってきます。
世界は五分前に作られたのではなく、世界はビッグバンの時に(コンピュータの中で)生まれ、(コンピュータの中のシミュレーション時間で)現在に至るのです。

五分前の時点で上位宇宙の3Dプリンタでコンピュータの中からわたしたちの宇宙をプリントアウトしたのかもしれませんし、今現在もコンピュータの中なのかもしれません。
その場合は「現実」とマジックペンか何かで書かれたコンピュータに、「非実在」と書かれたコンピュータから宇宙のデータをコピーしたのでしょう。

真面目な話、これではどちらも「この世界は五分前に作られた」などとはいえません。
宇宙の場所が五分前に移動したと言う程度で、宇宙が作られたというのは明らかな間違いです。

「コンピュータの中だから偽物だ」などということはできません。
コンピュータの中に存在していることと、それが実在しているかどうかということの間にはなんの関係もありません。
私たちは実在しています。
私達の体は、タンパク質を構成するたくさんの原子が作り出すパターンです。
コンピュータの中のAIは実在しています。
AIはコンピュータのメモリ中の電子が作り出すパターンです。
まさかAIが非物質だということはできません。
私達の宇宙は、謎の知的生命体Xの世界にあるコンピュータを構成している物質に基盤があった、というだけのことです。
以上証明終わり。

中国語の部屋は間違っている!!

中国語の部屋はよく批判されます。
なにしろ、中国語の部屋自体は、全体として、ちゃんと中国語で外の人とコミュニケーションしているわけですから。
部分部分が中国語を理解していなかったとしても何の問題もありません。
ちょうど私達の脳のニューロン一つ一つが言語を理解していなかったとしても、脳全体では言語を理解できるのと同じです。
あるいは身近な例で言うと、車の車輪やエンジン単体では「走る」という機能が備わりませんが、それらのパーツを全部組み立てると、全体として「走る」という機能が生まれます。
部屋の中の人も中国語マニュアルも中国語を理解していませんが、それらが合わさると中国語を理解します。
一体どこに問題があるというのでしょう?

すでに多くの人によって批判されているので、あえて批判する必要はないのかもしれません。
しかし世界五分前仮説との類似性を考えると、ここで取り上げないわけには行きませんでした。
いったい『できる!中国語マニュアル!!』はどのようにして作られたのでしょう?

外から見て全くあらが見つからない中国語マニュアルです。
2014年の人間でも1人で頑張ってかける範囲をはるかに超えています。

一つには「人間の神経を完全にスキャンして、そのシミュレーションプログラムを人でも実行できる中国語マニュアルとして書いた」というものです。
スキャンされた人が誰かはわかりませんが、中国語が上手い人であることは確実でしょう。
なので、その結果はちゃんと中国語を理解しているように振る舞いますし、実際理解しています。
マニュアルを実行している中の人は中国語を理解していませんが、それを言うなら私達の体を構成する原子を動かす宇宙の物理法則だって言語を理解していません。
そこまではいいでしょう。
このことはよく言われるので、ここではこれ以上突っ込むことはしないことにします。

問題は次のケースです。
中国語マニュアルが、ニューロンのシミュレーションであるコネクショニズム的なものではなく、if-thenの昔ながらの一般的なプログラムだった場合です。
「これまでに「~~」、「~~」、...「~~」と言われていたなら、「~~」と答えよ」
この場合は自信がなくなる人も多いと思います。
「本当にこの部屋は中国語を理解しているの!?」
しかし、その心配の必要はありません。

そういうマニュアルはどうやって作ることになるでしょう?
中国語が得意な人の言動をもとに作るしかありません。
そしてそれこそが、中国語の部屋のアキレス腱なのです。

マニュアル作成には、たくさんの、実在の怒りや悲しみや中国語の理解が伴うのです。
世界五分前仮説のケースと同じように、全く0から作り出すことはできません。
マニュアル中に登場する言葉はすべて現実の言葉がもとになっているのです。

「それのどこがおかしいの?マニュアルのもととなった昔の人が中国語を理解していたからといって、今の中国語の部屋が理解している事にはならないじゃない.。だいたい時間が離れてるし。」
と思いの方、違います!!

次のような話を聞いたことはありませんか?
人は、体がある所に意識が宿ると。
人の視覚を覆い、「別のところにある」カメラからの映像だけを見せると、「あたかも」その人はそのカメラの位置に自分がい「るかのような錯覚を覚え」ます。
これは実は正確ではありません。
錯覚ではなく、本当に人の意識は身体のある所に存在するのです!!
話の流れがつかめてきたと思います。

つまり、マニュアルのもととなった中国語を使える人の意識は、その新たな身体である、中国語の部屋に存在するのです。
なるほどカメラの場合は物理的な位置が違うという話でした。
しかし物理的な時間が違ってはいけない理由があるでしょうか?
たとえ1000年離れていようと、中国語の部屋には、そのマニュアルのもととなった人の意識が宿るのです。
たとえマニュアルの中身がif-thenの羅列だったとしても。

完璧な偽物を作り出す作業自体が、本物を生み出す

ここまでで、ふたつの理屈を批判しました。
一つは「この世界は五分前に作れた偽物かもしれない」という「世界五分前仮説」。
もう一つは「外から見ると中国語を理解しているように見える存在も実は理解していないかもしれない」という「中国語の部屋」。
この2つはともに、「完璧な偽物を作る作業は、それ自体が本物を生み出してしまう」ということを忘れています。

まったく準備もなしに全く過ちが検証できないレベルのものを作れると考えてしまった所に、そもそもの間違いがあったのです!!

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