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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

自分の存在をコードする情報

タイムマシンで明日の自分から「今日は晴れだ」というメッセージがやってきたら、たぶん明日は晴れなのでしょう。「たぶん」と書いたのは、もしかするとそのメッセージが明日の自分によって書かれた嘘かもしれないからです。というわけで、タイムトラベルで未来予知をしようと思ったら、「自分にうそをつかない」というのが必要条件です。もちろん、他人にタイムマシンを奪われて嘘を送られる危険性にも気を付けなければいけません。

しかし、明日から送られてくるメッセージが「自分は存在している」だとしたら、話は簡単になるかもしれません。自分がいなければ決して現実にならないような情報を送るのです。


秘密のパスワード

あなたしか知らない秘密のパスワードが明日からタイムマシンで送られてきたとしましょう。そうすると、あなたは(明日まで)不死を得ることになります。というのも自分が死んでいたらメッセージを送ることはできませんし(自分にうそをつきたくてもつけない)、他人にもそれを送ることができないからです。つまりこの秘密のパスワードは、「自分は存在している」という情報をかなり正確にコードしているのです。

もちろん、このメッセージを何かに応用するのは難しそうです。自分の生存率を上げようにも、自分が無敵だと思ってビルから飛び降りるような人のもとには、「自分は存在している」というメッセージは届かないでしょう。私がここで言っているのは、あくまで奇跡的な状況下のみで起こる面白おかしい特殊例であり、再現性のあるテクニックではないのです(たぶん)。

個人的な事情ほど信頼できる

あなたのアイデンティティをコードした情報は、パスワードと同様、他人が予測できてはいけません。たとえば"123456"というのは最低なパスワードの一つです(2013年~2019年に最も使われているパスワードです)。何か珍しい情報でなければいけません。

かといって、完全にランダムな情報も良くないかもしれません。というのも、ランダムな情報は覚えにくいからです(もしメッセージを10年後から受け取りたいのなら、10年間メモも取らず誰にも知られることなく、タイムマシンに入力するまで覚えていなければいけません)。というわけで、「あなたにとっては意味があるが、他人には理解されにくい何か」とうのがこのパスワードにはふさわしいのです。

プライバシーの大切さ

このパスワードは誰にも知られてはいけません。知られたらその瞬間、未来からのメッセージが信用できなくなり、あなたは不死性を失うのです。あなたを明日までに始末しなければならない暗殺者は、明日までにあなたを拷問してパスワードを入手し、タイムマシンで送信しなければいけないのです。

自分だけ珍しいものを知っている

このロジックは逆に考えることもできます。もし未来から全く見たこともないような珍しい情報がやってきたとしたらと考えてみてください。そしてそれを知っているは自分だけで、未来においても偶然ではそんな情報は生まれそうにないとします。

そうすれば、それをパスワードとして使用できます。

未知の何かに出会ったときそれを誰にも教えずずっと取っておくことによって、不死性を手に入れることができるのです。

マーティンのアルバムコレクション

これらの性質はSF小説『ゼンデギ』の冒頭を私に想起させます:

この木枠の中身は数十年間、何ひとつ捨てることなく持ち運んできたものだ。それはマーティンの自分史の一部であり、収録曲リストやライナーノートの形で書かれた日記だった。買ったことが恥ずかしくなるようなゲテモノもたくさんあったが、マーティンはそういうレコードも忘れたくなかったし、手放したくなかった。コレクションを削るのは修正主義の類に感じられるだろう。自分が二度と、ディーヴォとかザ・レジデンツとかヴァージン・プルーンヅに金を出す気にならないのはわかっているが、だからといって、そのページを日記から破り取って、エルヴィス・コステロやザ・スミスといった高尚な一団に青春のすべてを捧げていたふりをするのも嫌だった。世に知られていないアルバムほど、いかがわしいアルバムほど、うんざりした気分にしかさせられないアルバムほど、それを自分の過去から削除することで失ってしまうものが大きかった。

いうまでもなく、この「マーティンのアルバムコレクション」は秘密のパスワードの要件を満たしています。もしこのコレクションを処分したら、マーティンから生きる力は失われるでしょう。

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