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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

3次元空間の知的生命体は5次元の大脳皮質を持っていなければならない

ホモ・サピエンスの大脳皮質は2次元です。
大脳はもちろん3次元空間に存在しますが、大脳皮質は脳の表面に2次元のしわくちゃなシートとして存在しています。

しかしこれは、領野間の神経接続や血管などを通すため仕方がなく2次元になっただけで、実際には大脳”皮”質は5次元であるのが理想的だということをここでは述べます。


2次元の大脳皮質では体性感覚野は1次元になる

5次元の大脳皮質が理想的な理由は簡単です。
2次元の大脳皮質では体性感覚野は1次元になってしまうので(3次元の身体が1次元につぶれてしまう)、現実の3次元の身体をきちんと脳にマップしてやろうと思ったら、脳のほうを身体の次元+2次元にしてやれば良いというわけです。

ペンフィールドのホムンクルスを思い出しましょう。

wikipediaの「体性感覚」から引用です。
もとはワイルダー・ペンフィールドさんの図です。

これは脳の身体をつかさどる部分です。
身体に刺激が来たら、上の図のそこに対応する部分が反応します。

ここで注意してもらいたいことがあります。
この図は1次元になっている、ということです。
大脳皮質の2次元の平面ではなく、1次元の線上に身体がマップされています。

私達の身体は3次元です。
なのに3次元の身体が1次元にマップされているのです。
2次元も潰れています!

もちろん外の世界からの刺激は体の表面を通してやってきます。
そういう意味では2次元の体表→1次元の体性感覚野で、1次元しか潰れていないとかんがえることも出来ます。
しかしそのかわり内臓からやってくる感覚が犠牲になってしまっているわけです。
内臓のダメージを体の別の部分のダメージと勘違いしてしまうのはこのせいかもしれませんね。

なぜ体性感覚野が1次元になるのか?

ここまでの話で、なぜ大脳皮質はせっかく2次元なのに、2次元の体性感覚野にならないのか不思議に思う方もいるでしょう。
それは、体性感覚野というものは、運動野と隣り合っていなければならないからです。(たぶん)

運動野
体性感覚野

で検索してみてください。
体を動かす脳の部分と(アウトプット)、体から感覚を受け取る脳の部分(インプット)が隣り合っていることがわかると思います。

インプットとアウトプットがすぐ近くになければいけないということは、インプットとアウトプットがあわせて2次元でなければいけないということです。
よってそれぞれは1次元になります。

なぜインプットとアウトプットはすぐ近くになければいけないのか

これはコンピュータのニューラルネットワークに慣れた人は奇妙に思えるでしょう。
ニューラルネットワークではアウトプットとインプットは離れているものだからです。
最近流行りのDeep Learningではインプットとアウトプットの間に沢山の層があって、かなり離れているのが普通です。

ではなぜ人間の脳はインプットとアウトプットが隣り合っているのかというと、それはおそらくそれが脳の基本的アーキテクチャだからでしょう。
これはつまり、低レベルの行動はある程度自動的に行われることを意味します。
意識的にどうこうするわけではなく、脳の低いレイヤーが意識とはあまり関係なく勝手に行動するわけです。
そうすることで、ぐだぐだ考えて行動するよりすぐ行動に移せます。

かといって、自分の体が意識とは関係なく勝手に動き始めてしまうということもありません。
まあたまにはあるかもしれませんが。
意識がおかしいなと思えば低レベルの層に干渉を行えるのです。
仮に身体が勝手に動いたとしても、それはじきに修正されます。
低いレイヤーはある程度自律的に動くわけですが、完全に自律的というわけでもない、というわけです。

これなら赤ちゃんの脳の成長もやりやすいでしょう。
単純なフィードフォーワードなDeep Leaerningで動く学習済みロボットでより高度な行動をとろうと思ったらどうすればいいでしょう?
きっと新たな層をどこか適切な場所に(どこ!?)追加することになるのでしょう…。
しかしそれはちょっとめんどくさそうです。
新たな層をどこに追加しても、一時的にそのロボットは行動不能に陥りそうです。

しかし人間の脳だと単純にもう一層を一番上の層の真上に追加するだけでいいのです。
その際行動不能になったりは、多分しないでしょう。
人間の脳の構造はスケーラビリティに優れています。

(急いでニューラルネットの擁護をしておきます。
普通のフィードフォーワードネットワークが常に悪いというわけではありません。
もしネットワークが並列処理ではなくシングルスレッドで計算されていた場合、現在のネットワークの構造のほうが高速です。
高速というと語弊があります…人間の脳の構造を真似た構造にすると単純な動作は早くなりますが、思慮にとむ行動は起きるのが遅くなります。
そして昔ながらのフィードフォーワードネットワークは、思慮に富む行動も単純な動作も同じくらい早く起きるわけです。

今でこそ並列処理は一般的になっていますが、ニューラルネットワークが考えだされた当時はそうではないでしょう。
昔のプログラムはシングルスレッドが普通だったので、当時はそっちの方が合理的だった面もあるわけです。

そしてロボットを動かすのではなく、単に画像認識するネットサービスを作りたい、というような場合は、むしろ今までのフィードフォーワードネットワークを使うほうが賢明でしょう。
ロボットなら徐々に行動を変えていくことが出来ますが、画像認識は一発でユーザーに正しい答えを出してあげなければいけないからです。)

数珠つなぎの予測

インプットとアウトプットが近くになければいけないというだけでは、大脳皮質は現実の身体の次元+1次元でよいのです。
もしそれだけなら、3次元の体を持つ私達は、4次元の大脳皮質を持つだけで大丈夫だったでしょう。

しかし実際にはさらにもう1次元必要です。
理想の大脳皮質は4次元ではありません。
5次元なのです!

残りの1次元はなぜ必要かというと、似たような構造をさらに数珠つなぎにつなげて広げなければいけないからです。
これで理想的な大脳皮質の次元は5次元となるということがお分かりいただけると思います。

3次元(現実の身体)+ 1次元(入力と出力をすぐ近くに) + 1次元(数珠つなぎ)= 5次元(理想的な大脳皮質の次元)

これはカール・フリストンさんの"The free-energy principle: a unified brain theory?"から取ってきた図です。

この図が言っていることは、入力と出力のペアがたくさんつながることによって、複雑な行動を取れるようになるということです。
体性感覚野と運動野が一つだけでは、単純な行動しか取れないでしょう。
しかしそれと似た、しかしちょっと高度な役割を持つものが沢山つながれば、話は別です。
上の層ではより高度な情報処理を行い、下層に介入できるわけです。
下層の情報をまとめあげて上の層が判断をし、上の層は下の層に介入して長期的な視野を持った行動をするのです。

そういう意味では、今のDeep Learningをロボットの中身にするのはちょっと違うかもしれませんね。
もちろんDQNのような成果はすでに出ていますが、どこまで性能が上がるかはわかりません。
「複数の層がある」という点で、人の脳とDeep Learningは同じですが、情報の流れは違う感じがあります。
人の脳の層は各層の間で情報を互いに送っています。
それも頻繁にです。
リカレントニューラルネットワークを過激にした感じです。

なお、人間の脳だと身体の感覚をまとめる領野が後ろの方にあり、そこから脳の前の方の高度な行動をつかさどる部分に接続があります。
それっぽいですね。

大脳皮質はその世界の次元+2次元であるべき

ここまでは3次元世界の話をしてきましたが、実際にはもうちょっと一般的な話ができそうです。
「n次元空間に生息する知的生命体の大脳皮質はn+2次元でなければならない」

具体例をもう一つ考えましょう。
さっきのフリストンさんの書いた文章からもう一枚図を持ってきます。
見てください。

この図は生物の身体と脳を表しています。
身体と言ってもそれを表しているのは左の四角いSensory inputと書かれている部分だけです。
残りの△や○や▲や●は全部脳の部分です。

左の△や●は単純な行動をつかさどる部分で、右にいくほど複雑な行動を司ります。

注意して欲しいのは、これは身体がセンサーが一つだけの点(=0次元)であるということです。
そして、その横に付いている脳は、縦横2つの広がりを持つ、2次元となっています。

△ ○ △ ○ △
● ▲ ● ▲ ●

もうおわかりでしょう。
大脳皮質は、身体の次元+2次元でなければいけないのです!!

ええ、もちろん3次元と0次元のケースを考えるだけでは、一般化したことにはならないかもしれません。
が、イメージは湧いてきませんか!?
げんみつなしょうめいは読者の皆さんへの課題ということにしておきます!

実際の大脳皮質はその世界の次元 - 1次元となる

理想の大脳皮質はn + 2次元です。
ところが、実際に生物が大脳皮質をつくろうとすると、その世界の空間次元から1次元減ってしまいます。
わたしたち3次元空間世界の住人だと、大脳皮質は2次元となります。

それはおそらく、大脳皮質の領野の間をつなぐコードが残りの1次元を使うからです。
これはどうしようもありません。

何次元の住人だろうと、こう思うのです:”ああ!どうして現実の大脳皮質は理想より3次元も次元が小さいんだ!!”

これは何を意味するのか?

大脳皮質がn+2次元でなければいけないということから何を学べばいいのでしょうか?
まずひとつは、空間が何次元だろうと、知的生命体の大脳皮質は必然的に歪まざるをえない、というものでしょう。

空間が5次元の宇宙では7次元の大脳皮質が必要となるわけです。
そしてその5次元人は言うのです:”ああ、理想的な大脳皮質を格納できる7次元空間があったらいいのに!”
しかしお分かりと思いますが、7次元空間では9次元の大脳皮質が必要となるのです。
”ああ、理想的な大脳皮質を格納できる9次元空間があったらいいのに!”

もう一つの教訓は、意識を持ったソフトウェアを作る際にネットワークの構造を考慮することができる、ということでしょう。
生物学的な素材を使って5次元の大脳皮質を作るのは難しいかもしれませんが、ソフトウェアならどうでしょう?

実のところ、ソフトウェアなら5次元の大脳皮質など楽勝で作れます。
ですから、もしいつの日か意識を持ったソフトウェアを作れる時代が来たら、その時には大脳皮質を5次元にしてあげましょう。
そうすればきっと喜んでくれます。

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