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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

かんたん量子力学 ハイゼンベルクの不確定性原理

量子力学では日常の感覚になじまない現象が頻出しますが、かんたんに理解できるところもあります。このページでは、「位置と速度(×質量)を同時に正確に知ることができない」という<ハイゼンベルクの不確定性原理>の直感的な説明します。数式は無しでアニメーションだけです。


量子力学では物体を波で表す

正直な話、「位置と速度を同時に正確に知ることができない」などと言われても、ピンときません。誰かに「ねえ知ってる?実はミクロの世界では位置と速度は同時に正確に知ることができないんだよ!」と言われたら、会話を続けるためには「わあすごい!本当に?」と驚きたいところですが、文章の意味がよくわからないので、「へぇ…そうなんだ…すごいね…」となり、そして会話は途切れるわけです。

というわけで私達は他者を拒絶しないために、具体的なケースを見てどういうことなのか感覚をつかむ必要があります。

ゆっくり動く物体(1次元)

速く動く物体(1次元)

静止した物体(1次元)

これら3つのアニメーションは、量子力学と、それ以前の物理学(ニュートン力学)の違いを表しています。ニュートン力学ではボールの位置と速度はひと目で分かります。

しかし量子力学版に表示されているのは、ボールではなく波のような図形です(バネといったほうが正しいでしょう。しかし物理学者たちはこのバネを波とみなします。バネは真横からみたら波だからです)。このように、量子力学では速度がわかっている物体を、その速度の半分で動く波で表します(波長も速度によって決まります)。この波には波動関数という名前がついています。

これは量子力学では物体がストローのように伸びるという意味ではありません。観測すればどこかに普通のサイズの物体が見つかります。このストローは、「観測したときにそこで物体が見つかる確率」を表します。ストローが太ければ太いほど、そこで物体が見つかる確率は高いのです。

ところがこのアニメーションでは、ストローの太さはどこまで行っても――宇宙の果てまで行っても!――同じです。これはつまり宇宙全体に渡ってその物体の存在確率が等しいということを意味し……つまりどこで見つかるのかさっぱりわからないということなのです!このように、速度が完全に決まったら、位置が完全にわからなくなります。宇宙のどこで見つかるかすらさっぱりわからないのです。どんなに片付けが下手な人でもここまでもののありかがわからなくなることはないでしょう。しかし量子力学ではそういう事が起こりうるのです!

位置が決まると速度が決まらなくなる

一方、位置がわかると、速度がわからなくなります。

位置を決めるためには、波動関数のどこか一か所を太くする必要があります。たとえば次の図のように、たくさんの波を山の位置をそろえて足すと、そこにとても大きな山ができ、そこに存在する確率が高くなるでしょう(そこ以外の場所は山と谷が打ち消し合って、とても小さくなります):

次のシミュレーションは、このやり方で位置をある程度定めた波動関数です。ある場所が特に太くなっていて、そこで見つかる確率が高いのです。(スタートボタンでアニメーションがスタートします)

=

たしかにこれで位置はある程度わかります。しかし今度は速度がわからなくなってしまいました。ここでやっていることを考えてみてください。この波動関数は、たくさんの速度が違う波(それぞれ波長も違います)を足して作り出したのです。それはつまり、様々な速度が不気味に共存することになっているということです。

あっちを立てればこっちが立たずです。速度を定めたら位置が定まらなくなります。位置を定めたら、速度が定まらなくなります。物体の位置と速度の不確定性は、ある程度以下にはできません。これがハイゼンベルクの不確定性原理です。そしてこれは、意地悪な悪魔が科学者に嫌がらせをしているわけではなく、単に波の性質によって自然に生じるものです。

ちなみにスタートボタンを押すと、山が広がって崩れていきます。違う速度の波を足して無理やり高い山を作ったため、足並みがすぐにそろわなくなるのです(高い山を作るには、各波の山が同じ位置になければいけませんが、それらは違う速度で移動するので、すぐに山の位置はズレます。はじめから山の崩壊は運命づけられていたのです)。物体の位置がわかったと思っても、それは一時的なものに過ぎません。すぐに雲のように広がりわからなくなってしまいます。どこにあるか知ろうとしたら、また観測して偶然見つかるのを待つしかありません。

日常生活では

以上の話は、日常生活で気にすることはありません。というのも、この不確定性は、私達の大きさと比べるとはるかに小さいからです。車を止めたからと言って、車が全宇宙に広がるわけではありません。私達が車が止まったと思った時、じっさいには目に見えないほど小さく動いているうえ、位置も目に見えないほどぼやけています。その効果はあまりにも小さいため、私達がそれに気づくことはないのです。

まとめ

物体の位置と速度(正確には速度×質量)は同時に正確に知ることはできません。これは物体のふるまいが波で表されるからです。物体の位置は波の高い山の位置で表され、速度は波長で表されます。高い山を作るにはたくさんの波長の波を足すしかありません(位置を決めたら、速度は決まらなくなります)。波長を均一にしようとすれば高い山は消えてなくなります(速度を決めたら、位置は決まらなくなります)。

この効果は日常生活では無視できるほど小さいので普段気にする必要はありません。

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