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Memeplexes

プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

メモリの消去

コンピュータのメモリを消去すると熱が出ることがあります。現在のコンピュータは、電子を蓄えることで情報を記録しているので、メモリを消去すると電子がにげ、にげる勢いが熱となるのです。ここではパターンの分岐や合流の観点からこれを理解します。メモリの消去とは0と1を0に合流させることなので、パターンの合流を嫌う宇宙が帳尻を合わせるために熱を出すのです。


マクスウェルの悪魔が熱を出すとき

永久機関<マクスウェルの悪魔>は周りの熱を吸い取って使えるエネルギーに変えるという都合のいい機械ですが、現実に作ることはできません。マクスウェルの悪魔はときどき熱を放出してやる必要があり、その逃げる熱エネルギーが発電したエネルギーを上回ってしまうからです。つくってもいいですが、その場合永久機関とは呼べない代物になります。

マクスウェルの悪魔が熱を出すのは、自分のメモリを消去するときです。マクスウェルの悪魔は観測によってエントロピーを下げ、エネルギーを手に入れます。観測によって発電するのです。ここまでは問題ありません。ところがマクスウェルの悪魔を継続的に使うためには、観測し終わった後、次の観測に備えてメモリをリフレッシュしなくてはいけません。この時熱が出てしまうのです。なぜでしょう?

普通の説明

メモリを消去すると熱が出る理由の説明は基本的にはこうなります:コンピュータは電子を一区画にむりやりとじこめて情報を記録するので(区画に閉じ込められていたら1、空だったら0)、消去すると(0にすると)電子はその区画から逃げることになります。逃げた時の勢いが、熱のランダムな分子運動に変わってしまうのです。勢いのあるものが逃げれば、エネルギーが減るのはとうぜんです。

ランダウアーの原理からの説明

これをパターンの分岐や合流の観点から説明することもできます。メモリの消去とは、0と1を0に合流させることにほかなりません。

無条件の合流は、エントロピー増大の法則によって宇宙に禁じられているので、どこかで帳尻を合わせるために分岐が起きなければいけないのです。合流の代償としての分岐が熱なのです。ものが熱くなるというのは、おそい分子しかなかったのに、ところどころ中くらいの速度やもっと速い速度の分子も出てくるということですからね。

これは見方を変えると、コンピュータの中の情報が熱に変わったとみなせます。実際そうなのです。宇宙にある情報の総量は減らすことができないため、コンピュータから情報を減らしたら、その分が空気中の分子の運動の情報に変わってしまうのです(熱い空気は冷たい空気よりたくさんの分子運動の情報を持っています)。これをランダウアーの原理といいます。

もちろん、この原理はコンピュータに限らず、えんぴつで書いた文字を消しゴムで消す時にも通用します。消しゴムでこすると、摩擦熱が生じますからね。コンピュータは魔法の箱ではなく、現実世界の物質でできている物理法則に従う存在です。この原理は、この宇宙の物理法則に従うすべてのものに適用されるのです。

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