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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

分子1つからエネルギーを取り出す

十分な知識があれば、一見エネルギーがないようにみえるものからでも自由に使えるエネルギーを取り出せることがあります。旧石器時代には不可能でしたが、現代ではウランから実用レベルでエネルギーを取り出せます。では分子1つからエネルギーを取り出すことを考えてみましょう。


板と重り

分子1つからエネルギーを取り出すにあたって、どのような形でエネルギーを取り出すのかをはっきりさせておきましょう。分子1つを板に当て、それに付いた重りを上げるのです。

操作方法

←キー:板を左に動かします。

→キー:板を右に動かします。

分子の動きをエネルギーに変えて蓄える

分子が左から板に当たると、おもりは上がり、位置によるポテンシャルエネルギーを蓄えた状態になります(逆側から当たると、おもりが下がり、蓄えていたエネルギーがなくなります)。分子の方は当たった衝撃で少し遅くなります。つまり、分子の動きをエネルギーに変換することが出来るのです!

ところで、ふつうなら、おもりが一時的に上に上がったとしても、重力に引かれてまた下に落ちてしまいます。それを防ぐため、分子が当たった衝撃でおもりが上がったら、落ちる前にタイミングよく洗濯バサミかなにかで(これは分子サイズの機械なので、あくまで洗濯ばさみのような機能を持った分子レベルのパーツです)ロープを止めてやりましょう。そうすれば、ポテンシャルエネルギーには壁ができて、落ちることはなくなります。

現在の状態を表す水玉はつねに低い方に落ちようとします。現在、洗濯ばさみによって障壁ができたので、そこで止まり下に落ちなくなります。

先程少し触れましたが、この機械にはもう一つ弱点があります。分子が反対側(右側)から飛んで来ると、板が逆方向に移動して重りが下がり、せっかくためたエネルギーが逃げてしまいます。だから反対側から飛んでくる分子からは逃げなければいけません。あくまでも、左から飛んでくる分子とだけ衝突しなければいけないのです。分子の動きから分子のエネルギーを取り出すには、分子の動きを知っていなければいけないのです。

シラードのエンジン

では、この機械を利用して永久機関<シラードのエンジン>を作りましょう。次のような部屋の中に自由に動き回る分子が一つだけあったとします。

図ではきれいな部屋ですが、実際には壁も分子でできているので、凸凹しているでしょう。しかも熱のエネルギーでうごめいています(御存知の通り、温度とは分子のランダムな動きです。壁も分子でできているので――いちおうおおまかに部屋のかたちにはなっているものの――ランダムにうごめいているのです)。というわけで、赤い分子も実はめっちゃくっちゃな予想不能な動きをするはずです。

さて、ここで部屋に仕切りを入れます。

分子は左に閉じ込められました。ロープを結んでさっきのしかけを作ります(もし閉じ込められたのが右だったら、左右反対にしたしかけを作ります)。

分子は仕切りに当たり、重りを持ち上げます。

分子は仕切りに当たった衝撃で遅くなるいっぽう、仕切りは右に動きます。エネルギーが分子から仕切りに移ったのです。同時に重りも引き上げられますから、分子のエネルギーは結局重りに移ったといえるわけです。

重りが重力に引かれて落ちる前に、洗濯バサミかなにかでロープを固定しましょう。最後にこの仕掛を外せば最初の状態に戻り、再びエネルギーを取り出せます。

ちなみに、分子はこの後、熱エネルギーでうごめく壁にあたって加速し元の速度に戻ります。分子が遅くなりすぎてエネルギーを取り出せなくなる心配はありません。分子は周囲の熱エネルギーを吸収して再び仕切りを押せるようになるのです。この機械は第二種永久機関――周囲の熱エネルギーを奪って自由に使えるエネルギーに変換する装置――なのです。

全体の動き

全体の動きを振り返りましょう。

この機械は分子に仕切りを押させることで重りを持ち上げエネルギーを蓄えます。仕切りには「決まった側から分子が当たったときにしかエネルギーを蓄えることはできない。逆側から当たると蓄えたエネルギーが逃げてしまう」という弱点がありますが、それは左右反転することで見事に解決しています!

しかしそれがこの機械の致命的欠陥なのです。

この機械は仕切りを入れたときの分子の位置によって条件分岐しています。分岐をしたら、ふたたび分子に仕切りを押させるために、合流して最初の状態に戻らなければいけません。この機械に限ったことではありませんが、複数のパターンを合流させるのは一般的に無理があり、無理に合流させようとするとエネルギーが熱として逃げていってしまいます。その逃げるエネルギーは、重りに蓄えたエネルギーの増加分をすべて台無しにしてしまうほど大きいのです。この機械を動作させるには条件分岐をさせる必要がありますが、条件分岐自体がエネルギーを無駄にしてしまうのです。

つまりこの機械は、絵に描いた餅というわけです!あくまでも永久機関としては、ですが。

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