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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

少しずつ作る方法と一気に作る方法

昔読んだ『盲目の時計職人』に書いてあった内容を思い出しながら、自然淘汰のしくみを復習します。自然淘汰は一気に完成品を作るのではなく、少しずつ高性能化していくのです。「目のような複雑な器官がランダムな突然変異のみによって生まれるはずがない」というのは、いきなり人間の目を考えているからで、原始的な生物の目から考えればそれほどありえない話ではありません。


猿のタイプライター方式

ランダムなものは時間さえかければどんなものも作ることが可能です。猿にタイプライターをものすごく長い時間打たせれば、偶然earみたいなかんたんな単語になっていることもあるあるでしょう。さらに長い時間打たせれば、もっと長い、複雑な単語もになっていることもあるでしょう。さらに時間をかければ文章、あるいはシェークスピアの一作品になることもあり得るというわけです。

この方法の明らかな問題点は、時間がかかりすぎるという点です。猿が偶然、シェイクスピアをうつのに適切なキーを叩く確率は0ではないものの極めて小さく、猿にはシェイクスピア作品を創作できるのだ、などとは現実的には到底言えません。100文字の文章をこの方法で作るだけでも、無量大数年をはるかに超えます(1秒で10文字打ったとしてもです)。

自然淘汰を理解していない人がする批判に、自然淘汰を猿のタイプライターと混同したものがあります。「自然淘汰はランダムな突然変異によって複雑な器官が作られると言うが、単なる偶然でこんな素晴らしい器官が作られるなんて信じられない」というわけです。しかし実際にはこの批判は間違っており、自然淘汰はいきなり完成品を作るのではなく、少しずつ改善していくのです。

猿のタイプライター方式を次のように変形してみましょう。猿が偶然正しい文字を打ったら、その文字を固定して、次の文字へ行くのです。こうすれば、猿がアルファベットかスペースを適当に叩くたびに前進できます。かかる時間は、全てを適切に打った時のおよそ30倍程度で良い、ということになるでしょう。人間が意図的に書くのにこれだけ時間をかけたとしたら非効率ですが、ランダムな猿タイピングにやらせた時間としては悪くありません。

自然淘汰の場合、まつ毛を作るのは目ができてからで良いのです。ついでにいうと、目のレンズだっていきなり作る必要はありません。ピンホールカメラのように、目に穴が開いているだけでも、ある程度像は結べます。というわけで、最初は視細胞と穴さえあれば捕食者から逃げる役には経つのです。そのような目で見える世界は、わたしたちの見る世界よりは不鮮明かもしれませんが、全く見えないよりは生きるのに役立つはずで、それこそが自然淘汰に選ばれる条件なのです。

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