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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

海と細胞外液

ニューロンについてあれこれ考える前に細胞の化学について復習します。わたしたちの細胞の外の液体は塩が含まれています。これは海の成分と同じです。ニューロンはこの偽物の海を使って情報処理を行います。


環境を一緒に持っていく

わたしたちの先祖はかつて海に住んでいて、その環境に適応していました。その後川や陸に進出したのですが、海に適応した身体で海でない場所でうまくやっていけるものでしょうか?こういう時取れる方法は2つあり、根本から自分の体を作り変え全く新しい環境に適応するか、古い環境を――引っ越しのときに捨てずに持っていく思い出の品のように――一緒に持っていくかです。この時のわたしたちの先祖は後者を選びました。身体の中に塩分が含まれているのは海の代わりです。私達がポテトチップスの塩味を美味しいと思うのは、それを使って身体の中に海を再現できるからです!

細胞外液

細胞外液――わたしたちの細胞の外の液体――は、塩分を多く含んでいます。細胞内より細胞外のほうが塩は多いのです。これは海の模造品です。塩が濃い水と塩分が薄い水が一緒にあったら混ざってしまいそうですが、そうはなりません。なんと細胞はわざわざエネルギーを使って塩の成分を細胞の外に吐き出しているのです。私達は自分の体の中に偽物の海を作っておきながら、同時にそれを嫌ってもいるのです。

細胞と細胞外液の塩分濃度。細胞外液は塩分(NaとCl)が濃いですが、細胞の内部ではその1/10程度に薄まっています。こうなっているのは、ナトリウム-カリウムポンプと呼ばれる分子を使って外に塩を追い出しているからです。そのとき、エネルギー(ATPに蓄えられている)を消費しなければいけません。自然な時間の流れでは濃いものは薄い方へ流れるので、それを押しとどめようとするのはある意味時間を逆転させるような行為です。それはエネルギーを消費しなければ達成できません。エントロピー増大の法則です。SF風の表現をするなら、ここではATPを時間逆転装置ナトリウム-カリウムポンプの燃料にしているわけです。

ニューロンの発火と海

細胞は常に塩を細胞外液に追い出しているわけではありません。塩が細胞内に入ってくることもあります。たとえば、ニューロンが発火するときです。ニューロンが発火する時、細胞外のナトリウムイオンが細胞内に入ってきます。流入は0.001秒ほどで終わり、再びナトリウムイオンは細胞の外に出ていくのですが、それがニューロンの電気信号を生み出すのです。イオンはこすった下敷きのように帯電していますから、その移動は電気信号です。ニューロンの電気信号は、海の一部が細胞内に入ったり出たりすることによって生まれるわけです。

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