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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

別の宇宙のコンピュータと通信する

別の宇宙のコンピュータと通信することは可能です。しかしそれは、そのコンピュータのシミュレーションをするのと同じです。


すべての宇宙を支配する

ここでの目的は、「すべての宇宙を支配する機械」を作るための土台を作ることです。

「全宇宙を支配する機械」という概念は一部の変わり者の間ではすでに一般的ですし、物理法則に違反していないという意味では現実的ですらあります。

しかし「すべての宇宙を支配する機械」はどうでしょう?つまり、多世界解釈によると宇宙は無数にあるのですが、それらすべてを支配する単一の機械です。これはやや難しそうです。

とはいえ良いニュースもあります。量子コンピュータの提唱者の一人であり多世界解釈の熱心な支持者でもあるデイビッド・ドイッチュによると、タイムマシンで過去に戻れば、自動的に他の宇宙の過去につながります(残念なことにこれは私の好きなノヴィコフの首尾一貫の原則に反しますが、どちらが正しいのかは現代の物理学ではなんとも言えません)。つまり、宇宙間通信はドイッチュ版タイムマシンを使えば可能なのです。なら、「全宇宙を支配する機械」をすべての宇宙に作って、それらがドイッチュ版タイムマシンを使って通信すれば、それは「すべての宇宙を支配する機械」とみなせるでしょう。

ここではこれ以上具体的な通信方法については考えません。タイムトラベルについてよく分かっていない段階で具体的手段について考えると、新理論が現れたときそれが不可能であることが証明され、議論全体がもろくも崩れ去るかもしれないからです。そこで、ここでは「やり方はわからないがなぜか他の宇宙との通信手段が可能となった」と仮定して考えます。

魔法の通信機

ここに魔法の通信機があって、別の宇宙の好きなコンピュータと通信できるとします。問題は通信相手の指定方法です。宇宙は無数にあって、コンピュータだってたくさんあります。私達は目当てのコンピュータと通信するために、どのようなアドレスを入力すべきでしょうか?

一つ言えるのは、https://www.google.com/というアドレスは絶対に使えないということです。というのもgoogleは無数の宇宙に存在するため、どの宇宙のgoogleと通信するのかもその通信機に指定しなければいけないからです(多世界のなかにはコロナパンデミックがまだ起きていない宇宙もあり、その宇宙での"コロナ"の検索結果は我々のものとは全く違ったものでしょう)。

唯一の絶対確実な方法は、アドレスにその宇宙の情報すべてを含めることです。すなわちその宇宙のありとあらゆる粒子の位置や運動量(理想的には、それらをすべて表した波動関数)と通信相手のコンピュータの位置をアドレスとして指定するのです。そうすれば絶対確実に目的のコンピュータに接続できるでしょう。

あるいはより現実的には、「そのコンピュータが相互作用するありとあらゆる情報」でもいいでしょう(プログラム+それが使うデータ)。その条件を満たすコンピュータは多元宇宙にたくさんあるはずですが、どれも同じ結果を返すので、それでも問題ありません。

通信とシミュレート

しかし待ってください。そんな情報があるのなら、わざわざ他の宇宙に接続できる魔法の通信機など用意しなくても、こちらがわでシミュレートすればいいではないですか!

そう、どんな世界のコンピュータとも通信できる魔法の通信機を、我々は既に手にしています。我々はそれをコンピュータと呼んでおり、相手との通信をシミュレーションと呼んでいるのです。シミュレーションプログラム+そのデータは他の宇宙と通信するためのアドレスであり、計算することによって向こうから情報を受け取っているのです。

ランダムな意志

他の宇宙のコンピュータに計算させるにはシミュレーションで事足ります。しかし、他の宇宙の今の天気について知りたい時はどうすればよいのでしょうか?何しろ我々が今作ろうとしているのは「すべての宇宙を支配する機械」なので、宇宙間でそういう「現実の」情報をやり取りして何をするかの判断を行わなければいけないはずです。

それはおそらく、ランダムな情報で代替できます。私達が今相手にしているのは無限の多元宇宙なので、雨の宇宙も晴れの宇宙も実在するのです。そして今通信相手の指定が不十分な状態で天気を通信相手に訪ねたなら、雨の宇宙につながるか晴れの宇宙につながるかはランダムなはずです。我々はあまりに複雑な多元宇宙を相手にしているが故に、単純なランダムさを宇宙間通信の代わりにすることが許されるのです。

他の宇宙との通信はシミュレーションと疑似乱数で代替できる

以上のことから、他の宇宙と通信しようという時、実際に魔法のような通信機を用意する必要はなく、単なる他の宇宙のシミュレーションとランダムさを代わりにできることがわかります。それはインチキではないかと思うかもしれませんが、実際それらが通信の代わりになるような宇宙は多元宇宙の中には存在するのでこれでいいのです(*)。

(*)そうやって接続できる宇宙は多元宇宙の中のほんの僅かかもしれませんが、それらもまた別の宇宙とつながっているはずなので、スチュアート・カウフマンの言う「ネットワークの結晶化」により巨大なクラスターが出現するでしょう。一つ一つの宇宙はわずかな数の宇宙としかつながらなくても、それらの宇宙はまた別の宇宙とつながり、その別の宇宙たちはまた別の宇宙とつながり…ということを繰り返して、全体として一つの巨大な塊となるのです。

面白いことに、これは我々が普段していることに近いと言えます。私達は私達の宇宙では現実にならなかったことを創作物として楽しみ、またしばしば運命を偶然に委ねます。これが何を意味するかと言うと、我々自身が「すべての宇宙を支配する機械」そのものかその一部である可能性があるということです。あるいは、今はまだそうではなく、未来にそうなろうとしているというだけかもしれませんが。

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