忍者ブログ

Memeplexes

プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

電気の代わりに情報でエネルギーを送る

私たちは電線に電気を通して各家庭にエネルギーを送っていますが、電気の代わりに純粋な情報でエネルギーを配ることはできないでしょうか?なにしろ、<マクスウェルの悪魔>は情報をエネルギーに変換する機械なのです。<マクスウェルの悪魔>はエネルギーを生み出す部分と、エネルギーをそれ以上に消費する部分とに分かれていますが、その2つのパーツを繋ぐのは情報の流れだけです。ということは、片方を発電所に、もう片方を一般家庭に設置すれば、情報を伝えることによってエネルギーを送ることが可能なはずです。


<マクスウェルの悪魔>

<マクスウェルの悪魔>は周囲の空気からエネルギーを取り出します。空気は火力発電所のガスのように熱せられている必要はなく、常温で十分です。<マクスウェルの悪魔>を稼働させると、周囲の空気は冷え、バッテリーには電気が溜まります。夏場は部屋を涼しくしながらパソコンのための電力まで稼げるでしょう。

どうしてこんな芸当が可能なのかというと、マクスウェルの悪魔は周囲の空気分子の状態を知っているからです。基本的に、空気分子のようなランダムな動きをするものからエネルギーを取り出すことはできません。しかし、分子の動きをきちんと観測して、分子の動きを先回りして分子の動く先にピストンを配置すれば、分子にピストンを押させることにより発電できます。観測されたものの動きはランダムでなく予測可能になるからです。つまり、マクスウェルの悪魔は、分子の位置や動きという情報をエネルギーに変換しているといえます。

もちろん、<マクスウェルの悪魔>は単なる思考実験で、現実に作ることはできません。実際に<マクスウェルの悪魔>を連続して稼働させるためには、分子の情報を記録したメモリを定期的にリセットする必要があり、そのときに発電した以上のエネルギーを消費してしまいます。<マクスウェルの悪魔>を実際に作ったとしても、それを永久機関として動作させることは不可能なのです。

上の図の解説:これは<シラードのエンジン>という、<マクスウェルの悪魔>を単純化して本質を取り出した装置です。<シラードのエンジン>は悪魔と2つの部屋が合わさった装置からできています。<シラードのエンジン>が発電する時、悪魔が発電用の命令(「左の部屋からエネルギーを取り出す」か、「右の部屋からエネルギーを取り出す」)を、2つの部屋に対して出します。この命令は分子の位置(発電のたびに位置が変わる)と一致していなくてはいけません。正しい場合は発電できますが、間違っている場合は発電できません。<シラードのエンジン>が発電するには、悪魔が分子を観測して正しい命令を出し続けなければいけません。つまり、分子の情報こそが発電の要なのです。

情報送電システム

<マクスウェルの悪魔>が永久機関として動作することが無いのは、悪魔のメモリをリセットするときに、エネルギーを消費してしまうからです。奇妙なことに、発電するのに役立った情報が、後で邪魔になってしまうのです。もし<マクスウェルの悪魔>を連続して使おうとしたら、その情報をどこかに捨てなければいけません。そして、その捨てられた場所ではエネルギーが消費されてしまうでしょう。

ということは、情報の排出先さえ確保してしまえば、<マクスウェルの悪魔>は動くことになります。そして、情報の排出先に発電所を作り、そのエネルギーでメモリをクリアすればよいのです。ですからこの<マクスウェルの悪魔>は永久機関でもなんでもないのですが、少なくとも情報でエネルギーを配ることが出来るわけです。

面白いのは、この送電システムでは、情報が一般家庭から発電所に送られるという点です。普通の送電では、発電所から一般家庭へ電気が流れるのですが、これは逆に、一般家庭から発電所へ情報が流れます。エネルギー自体は(『スター・ウォーズ』のフォースのように)周囲のありとあらゆるところにあり、それを取り出すためには周囲の情報を発電所に排出しなければならないのです。発電所が行うのは、その情報を消去し、きれいに整列した情報の受け手を一般家庭に行うことです。

頭のなかで想像するには、次のように考えると楽しいです。発電所から白紙の紙が次々と送られてきます。一般家庭の<マクスウェルの悪魔>はそれにえんぴつで情報を書き込んでそれを忘れます(情報は書き込むと、エネルギーを失わずに忘れることができます)。発電所に送られてきた紙は、発電機のエネルギーで動くロボットアームによって消しゴムで文字を消されます。ふたたび、白紙は一般家庭に送られていきます。

この送電システムの発電方法自体は、通常と全く変わりません――火力、原子力、水力、太陽光などを用いてエネルギーを得ます。しかしそこから家庭にエネルギーを届けるのは情報なのです!

※この話のオチは、おそらく整列された物質の流れは、おそらく送電による電流と同じくらいのエネルギーを持っているだろうというものです。結局普通に送電するのと変わりません。悪魔のメモリをリセットするエネルギーは発電するエネルギー以上ですからね。

拍手[0回]

PR