忍者ブログ

Memeplexes

プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

化学反応によるネガティブフィードバック

ある化学物質の量を一定に保とうとしたら、少ないときに生産し、多すぎるときには分解するという高度な条件判断が必要に思えるかもしれませんが、もっと簡単な方法があります。秘伝のタレを少しずつ新しく作ったものに入れ替えるように、物質の一部を一定の速度でつくった新しいものと入れ替え続けるのです。こうすれば高度な条件判断などしなくても、自動的に理想の量を保つようになります。


自分を破壊しながら理想の自分を作る

操作方法

[←]キーを押す:物質を減らす。この操作はキャンバスを一度クリックしてから行う必要があります(2回目以降はクリックする必要はありません)。

[→]キーを押す:物質を増やす。この操作はキャンバスを一度クリックしてから行う必要があります(2回目以降はクリックする必要はありません)。

解説

このプログラムは、一定の濃度に保たれている化学物質のシミュレーションです。キャンバスに黒い丸が描かれていますが、これは化学物質の量を表しています。丸が左に行けば量が少なくなっていることを表し、右に行けば増えていることを表します。ユーザーはキーボード操作で量を変えることができ、黒い丸は変な曲線を描きますが、ユーザーが操作をやめれば、量を一定に保つ仕掛けにより元の量に戻ります。

この物質を一定量に保つ仕掛けは、周囲の環境から物質を一定の速度で合成します。それと同時に、その物質は一定の割合で分解され、周囲の環境に戻ります。破壊と再生です。この破壊と再生の計算を、このシミュレーションは一秒間に60回くりかえしているのです(あまりにも素早く破壊と再生を行っているので、ユーザーの目にはなめらかなアニメーションに見えます)。

破壊と再生でどうして物質の量が一定に保たれるのでしょうか?それは、分解は物質の量によって違うからです。分解というのは物質が多すぎると分解量が増え、少なすぎると分解量が減るものなので(これはこのシミュレーションに限った話ではなく、そういうものなのです。もし皿が世界に一枚しかない場合と、100億枚ある場合なら、後者のほうが一年間に世界中で割れる皿が多いわけです)、自動的に物質の量が調整されます。この計算は、言うなれば「古い自分を壊しながら理想の自分を作る」というものです。

この計算方法は上手く働きますが、人間で例えるととてもシュールです。もし文章を書いては消し書いては消しを繰り返している人を見かけたら、きっと思うような文章がかけないで苦しんでいるのだと思うでしょう。しかし、あなたがその人に聞いてみると、「いや、完璧な文章が書けたんだ」と答えるのです。では完璧以上のものを目指しているのだなと感心して様子を見ていると、その人はさっき消したのと全く同じ文章を書き始めるのです。気が狂っているとしか思えませんが、このシミュレーションがやっているのはそういうことなのです。

しかし、数種類の物質による化学反応のような、人間よりすこしばかり単純な現象では、このような盲目的な自己破壊と再生は役に立つでしょう。文章の場合だって、いたずら好きの子供がこっそり文章の文字を書き換えていたとしたら、文章をすべてチェックして不満なところを書き換えるよりは、盲目的に消しながら理想の文章を書くというやり方のほうが、ミスは少ないはずです。もしかすると、必要な分だけ消し必要な分だけ作るというやり方より、こちらの盲目的なやり方のほうが、長期的に見ればよいのかもしれません。

拍手[0回]

PR