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ポアソン分布を導く

前々回、確率的に分解する分子のシミュレーションを行いましたが、その分解の仕方は分子数を無限大にすると統計学に出てくるポアソン分布というものと同じになります。ここではポアソン分布のかんたんな説明を行います。


ポアソン分布:分解する分子の個数

ビーカーの中に化学物質の分子が無限に入っているとします。その分子は1秒間に1個のペースで分解します(分解する確率があまりに低いため、無限に分子があるのに実際に分解される分子は有限なのです)。といっても、分子運動というのはランダムなので、もしかすると1秒間に1個も分解しないこともあれば、2個や3個分解することもあるでしょう。分解は確率的なのです。「1秒間に1個分解する」というのはあくまでも期待値の話であり、時計の針が時を刻むように正確に1個分解されるというわけではないのです。

次の図はwikipediaにあるポアソン分布の図です。さっきの「ビーカーの分子が1秒間に1個分解する」という状況は、λ=1の黄色いグラフで表されています。この図では一秒間に0個分解する確率と1個分解する確率は同じであり、2個分解する確率はそれらより小さく、3個分解する確率はさらに小さくなっています。注意してほしいのは、分子が100個分解する確率でさえ小さいものの0ではないという点です。というのも、分解は確率的な現象であり、ビーカーの中に無限の分子があるのなら、そのうちの100個が偶然1秒以内に分解するということもありえないわけではないからです。それらの期待値を計算すれば1秒間に1個という頻度ですが、実際に分解される個数には無限の可能性があるのです。

ポアソン分布の図。ある一定の時間の間に起きる出来事の数とその確率の関係が図に示されています。(図:wikipedia「ポアソン分布」)

定義

ポアソン分布は次のような式で表されます。上のグラフはこの式を元に計算されたものです。

P(k)=λkeλk!

ここで、λは分解する分子の数の期待値です。

ポアソン分布を導く

では上の式を導きましょう。ただしいきなり導くのではなく、まずはビーカーの中に分子が10個しかない状況を考え、状況を徐々に複雑にしながらビーカーに無限の分子が入っている状況に近づけていきます。

ビーカーの中に10個の分子

ビーカーの中に分子が10個入っていて、一秒間に1個のペースで分解するとします。つまり、一つ一つの分子は1秒間に0.1の確率で分解します。

一秒間に1個というのはあくまで期待値であり、実際に1個分解するとは限りません。その証拠に1個分解するときの確率は、

P(101)=0.1×(10.1)9×10

であり、1より小さくなります。分解する数が2個や3個である可能性もあり、それらも含めると次のような式となります(k=0,1,2, ..., 10)。

P(10k)=0.1k×(10.1)(10k)×10Ck

1秒間に1個ではなく1秒間にλ個のペースで分解する場合、式は次のようになります。

P(10k)=(λ10)k×(1λ10)(10k)×10Ck

この式の10を無限大にすればポアソン分布が手に入ります。

ビーカーの中に無限個の分子

では分子数を10個から無限大にしましょう。分子数を無限にするにあたって、10をnに書き直します。

P(nk)=(λn)k×(1λn)(nk)×nCk

nを無限大にします。

limnP(nk)=limn(λn)k×(1λn)(nk)×nCk=limn(λn)k×(1λn)(nk)×n!(nk)!k!=λkeλk!

このλkeλk!というのはポアソン分布の式そのものです。ポアソン分布は、ある化学物質の分子が一定の確率で分解するとき、実際にある個数が分解する確率を表したものとみなせるのです。

まとめ

ある化学物質の分子一つが一定の時間内に一定の確率で分解するとします。それらが無限個ビーカーの中に入っているとすると、一定の時間内にk個分解する確率はポアソン分布で計算できます。ただし計算に使うのは時間内に分子一つが分解する確率ではなく、分解する個数の期待値λです。というのもポアソン分布では分子一つが分解する確率はあまりに小さくほとんど0であり扱いにくい一方、それに分子の個数である無限大を掛けたλは現実的な1個や2個…といった値に収まるからです。

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