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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

時間逆転ランダムウォークの動きのエントロピー

ランダムウォークは左と右どちらへ移動するのかわかりません。確率はどちらも50%であり、動きのエントロピーは1ビットです。時間逆転ランダムウォークは目的地が時間的に近かったり空間的に遠かったりすると動きが読みやすくなるためこれより下がり、場合によっては0ビットになります。


ランダムウォークの動きのエントロピー

ランダムウォークの位置のエントロピーは、目を離すとどんどん上がっていきます。ふたたび目を戻したときにランダムウォーク粒子が取りうる位置はたくさんあるからで、たくさん可能性があるのならエントロピーは大きいのです。しかし今回考えるのは視界の外にあるランダムウォークの位置のエントロピーではなく、目の前にあるランダムウォークの動く方向のエントロピーです。左に行くか右に行くかという動きのエントロピーで、これは普通のランダムウォークならどんなに時間がたとうが、つねに1ビットです。ランダムウォークはいつも左か右に行くしかありえませんからね。

この図はランダムウォークの動きのエントロピーを描いたものです。広がりゆく矢印はランダムウォークのランダムな動きを表しています。0.5という数字はその動きの確率を表しており、1という数字はその場所にある粒子が次にする動きのエントロピーが1ビットであることを意味しています。普通のランダムウォークでは、動きのエントロピーはつねに、どんな場所でも、1ビットなのです。定義からして、1ビットとは確率の等しい2択のエントロピーだからです。

(目を離したランダムウォークの位置のエントロピーは増えていきますが、それは動きのエントロピーがエントロピー増加の源なのです)

時間逆転ランダムウォークの動きのエントロピー

いっぽう、時間逆転ランダムウォークの動きは、ゴールまでの距離が長く、締切が近いほど、エントロピーは下がります。ランダムに動いている余裕はなくなるからです。ランダムさがないほどエントロピーはちいさくなります。しかしゴールまでの空間的な距離が小さく、締切までまだ時間があるのなら、普通のランダムウォークのエントロピーと変わりません。1ビットです。余裕があるなら動きのエントロピーは大きく、余裕が無いなら動きのエントロピーは小さいということができます。

これは時間逆転ランダムウォークの動きのエントロピーを図示したものです。まるの中に書いてある数字は、その場所の動きのエントロピーです。ここで注目すべきなのは、はしほどエントロピーが小さく、真ん中ほどエントロピーが大きいという点です。はしにあるときにはゴールまで一直線に動かなければいけませんが、真ん中にあるときには余裕があるのでランダムに動くことが許され、エントロピーが大きくなるのです。

この図から一体どんな教訓を読み取るべきでしょう?ひとつには、未来からの情報は行動のエントロピーを下げるというのがあります。人は誰しもタイムトラベルしてまだ子供のころのおじいさんを殺すことはできませんが、それは未来の情報(おじいさんは生き延び、あなたの父親をつくった)が、あなたの行動を制約しているからです。本来なら、高性能な爆弾とかを用意すれば暗殺はできそうですが、未来の情報によってその可能性は閉ざされており、たぶん、爆弾に飲みかけの牛乳をこぼしてダメにしてしまうのでしょう。未来がわかっていたらあなたの取れる行動のエントロピーは小さくなります。必ず失敗する――あるいはおじいさんにとっては必ず生き延びる――のです。

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