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背理法はタイムパラドックスを無理やり引き起こす証明法

数学の証明方法の1つである「背理法」は、ある否定したい仮定を元に論理を展開し、自分自身を否定させます。これはタイムトラベルについて考える時、自分のおじいさんを殺せてしまう歴史は否定されるというのと同じです。もちろん、「タイムパラドックスが起きない理由が背理法で証明できるのであってその逆ではない」という見方もできますが…。


整数は無限にあることの証明

まずは、背理法について復習しましょう。もっともかんたんな背理法の例として、整数が無限にあるかどうかを証明することを考えてみましょう。この答えはYesですが、背理法ではまず「整数が無限にはない」というのを証明のスタートとします。ここから矛盾をわざと作り出すのです。もし整数が無限にはない、つまり有限個しか無いのなら、クラスの中で一番背の高い生徒がいるのと同じように、一番数の大きな整数というのがあるはずです。ところがそれに1を足せば、「最大の整数より大きな整数」という矛盾した存在が生まれます。どうしてこんな矛盾がでたのかというと、議論のスタート地点「整数が無限にはない」というのが間違っていたからです。つまり、「整数は無限にある」のです!

このロジックの類似物は数学以外にも使われています。たとえばアメリカの移民問題で考えてみましょう。もし「アメリカに移民は来るべきではない」としたら、そもそもアメリカ合衆国は存在しないはずなので、矛盾が生じ、結果として残るのは「アメリカに移民は来ても良い」という考えです。「アメリカは移民の国だ」というスローガンは、政治に利用される背理法の証明の一部です。この論法は移民より反感を買っている外来種についても適用できるでしょう。私達に馴染みの深い食べ物の多くは外来種であり、そもそも私達ホモ・サピエンスだってアフリカ産です。ちなみにこれらの結論の是非について言うと、別の場所から来た生き物はホモ・サピエンスにしろそうでない生き物にせよ、良いものもいれば悪いものもいると考えるべきなのであって、別の場所から来たかどうかは真面目な判断基準にすべきでないでしょう。

タイムトラベル背理法

では、このロジックをタイムトラベルに適用してみましょう。政治に背理法を利用できるならタイムトラベルに応用できてもおかしくありません!

未来からあなたの孫がやってきたとしましょう。あなたにまだ子供はいません。その孫は「おじいさんを殺しにやってきた孫」でしょうか?それとも「殺意は抱いていない孫」でしょうか?もしあなたを殺しにやってきたとしたら、あなたの殺害に成功した場合、孫は生まれてこなかった事になります。しかし生まれてこなかったのならそもそも未来からやってきてあなたを殺害できるはずありません。矛盾です!ということは、そもそものスタート地点が間違っていて、孫は殺意を抱いていない可能性のほうが高いのです(もっとも、殺意を持っている孫がやってきてもあなたは死ぬことはありません。たぶん奇跡的に弾丸がそれるからです)。これがタイムトラベル背理法です(下の図)。

実際、タイムトラベルと背理法には興味深い共通点が3つあります。1つ目は最初の仮定とタイムトラベラーです。背理法は、ある仮定が正しいとしたらという所から唐突に始まります。しかしなぜ何の議論もなしにいきなり仮定が正しいなどと言い出すのでしょう?それは、それが未来からのタイムトラベラーだからです。未来からのタイムトラベラーはそれまでの歴史から予測しにくい存在です――なにしろ、それは過去の産物ではなく未来の産物なのです。

2つ目は、自分自身を作り出したものを否定するものは、否定されるという性質です。背理法では、自分自身を作り出した前提を否定する結論を生み出す仮定は間違っていると考えます。タイムトラベルでは、自分自身を作り出した原因を(過去に戻って)否定する歴史は存在し得ないのです。あなたは過去に戻って自分のおじいさんを殺すことはできないのです。

3つ目は、複数の選択肢の中から一つを選ぶという点です。背理法では、ある過程が正しいか正しくないかという2つの選択肢があり、そのうち矛盾のない方を生き残らせます。一方タイムトラベル背理法では、2種類のタイムトラベラーの可能性を考え、そのうちタイムパラドックスを引き起こさない歴史を生き残らせるのです。

以上のことから、背理法は矛盾のないタイムトラベルの計算と同じだということがわかりました!このことはあるわくわくするような可能性に目を向けさせます。つまり、4枚カード問題において問題の形式をより具体的なものに変えると生徒の正答率が上がるのと同じように、教科書に載っている全ての背理法をタイムトラベル形式に変えると正答率が上がるのではないかという可能性です!きっと100年後の数学の教科書は全てがタイムトラベル形式になっているでしょう。…いや、やっぱりそうはならないかもしれません。多分その頃には脳に直接情報を書き込む技術が開発されているに違いないからです。どちらが正しいかは、未来からのタイムトラベラーから教えてもらうしかないでしょう!

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