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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

かんたん量子力学 ボーアの量子条件の物質波による解釈

20世紀初頭の物理学者たちは原子核の周りを惑星のように電子が回っていると考えていました。この考え方は現在高校の教科書に載っていますが、わかりやすいので載せているだけで正しくはありません。実際は、電子は原子核の周りを雲のように覆っているような奇妙な状態です。ここでは、どのようにして物理学者たちがそのような考え方にたどり着いたのかを説明します。


惑星モデル

物理学者たちも最初は、惑星が太陽の周りを回るように、電子も原子核の周りを回っていると考えていました。

しかしこの考え方にはいくつか問題があります。惑星と違って、電子が回転運動すると、電磁波が生まれることが当時すでにわかっていたのです。電磁波としてエネルギーを放出した分、公転スピードは落ち、あっという間に原子核に墜落するはずでした。

そこで物理学者ニールス・ボーアは、なぜかある特定の電子の軌道のみが許されるのだろうと考えたわけです。なぜそうなるのかという疑問には全く答えませんが、これなら墜落する軌道は許されないので電子の墜落問題は解決です。これは現在にも考え方が残っていて、高校の教科書に載っている電子殻のことです。2つの軌道の中間はなぜか許されません。

カルシウムの電子殻。Wikimedia Commonsのページより。電子はこの種の図に描かれている軌道のみ許されており、中途半端な軌道――たとえばある2つの軌道の中間の軌道――を取ることはなぜかできません。これによって電子が原子核に落ち込む軌道も許されなくなり、電子の墜落問題は解決します。

波で説明

しかしなぜ特定の軌道しか許されないのでしょう?「墜落しないのはなぜか?」「墜落する軌道は許されないからだ」というのは説明になっていないように思えます。(そんな魔法のような説明が許されるのなら、各国の兵器開発者は大喜びでしょう。「この戦闘機は墜落しない。なぜなら墜落は許されないからだ。」というわけです。)

物理学者ド・ブロイはこの疑問の答えを発見しました。当時電子はとても小さな粒だと考えられていたのですが、電子が波だと考えれば、特定の波以外は打ち消し合い、限られた軌道だけが生き残るようになります。波というのは自分自身と綺麗につながる波以外は、自分自身の山と谷が重なり合い消えるものだからです。

ちなみにこの発見にはアインシュタインの考えが影響しています。アインシュタインは長年波だと思われていた光が、粒子のように振る舞うことを示しました。なら逆に、粒子だと思われていた電子が、実は波であったとしてもおかしくありません。残念ながらド・ブロイのこの考えはほとんど無視されました。見出したのはまたしてもアインシュタインで、彼による紹介で、物理学者シュレディンガーは物質の振る舞いを波で表すシュレディンガー方程式を発見することになるのです。

(ド・ブロイは、波長が速度に対応するということをすでに見抜いています。速度が速いほど波長は短くなるのです。さきほどの例でいうと、太陽系のモデルでは、低い軌道ほど速く公転するのですが、波モデルでは、低い軌道ほど波長が短くなるわけです。この考え方はシュレディンガー方程式でも変わりません)

正確にはもっとぼやけている

この図では電子の波はある軌道の上を正確に通るように見えますが、現実の電子の波はもっとぼやけています。波というのはある一箇所に集中させようとしても、崩れるものなのです。正確な形は、次回解説します。

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