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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

タイムトラベル付き決定論的宇宙では未来からの僅かな情報が未来を決定する

すでに述べたように、ノーベル物理学賞受賞者キップ・ソーンによると、ニュートン力学のような決定論的ルールにタイムトラベルを組み合わせると、決定論的であるにも関わらず複数の未来が可能になります。とうことは、未来から来た情報が未来がそうなった原因そのものだと考えることも出来ます。


真・呪いの手紙

あなたは決定論的な宇宙(ただしタイムトラベル可能)に住んでいるとします。そこで未来から「一週間後お前は死ぬ」という手紙がタイムトラベルしてきたとすると、あなたは必ず死ぬことになります(その手紙が冗談でない限り)。一方、「一週間後お前は生きている」なら、あなたは必ず死にません。

では生き死には何によって決まるのでしょう?常識的には、手紙は原因ではないと考えるべきです。あなたの死は交通事故か通り魔に襲われたか心臓発作によるものであり、手紙はそれを書き記したに過ぎず、手紙を書いた人を責めてもあなたが助かるわけではない、というわけです。しかしタイムトラベルの話をするときは全く別です。今回のケースに限り、死の予告が死の原因だと言っても間違いではありません。

まぐれ当たりを記録する

ではわかりやすく理解するためにこの話を外部から見てみましょう。あなたは宇宙のシミュレーションをしており、未来からやってくる手紙の内容を生か死か自由に選択できるとします。死を選んだ場合、シミュレーション世界内の哀れな犠牲者は必ず一週間後に死にます。

なぜこんな不気味なことが可能なのでしょうか?ここには簡単なトリックがあります。実はこのシミュレーションを走らせたのは今回が初めてではありません。既に可能なすべてのパターンを走らせており、運良く犠牲者が死んだ(たぶんバタフライ効果の結果です)手紙のみを記録しておいたのです。あなたが選択肢として選ぶのは、そうやって既にタイムパラドックスが起きないことが確認された手紙からなのです。今回のシミュレーションは結果の再確認に過ぎません。もちろん手紙の内容をどのようにしても犠牲者を殺せない、解無しという場合もあるでしょう。

普通は「お前は死ぬ」などと書かれた手紙をもらっても死ぬことなどありません(鼻で笑うだけです)。仮にバタフライ効果による奇跡でそんな事があったとしても、それはあくまでそのときにだけ通用した手法であり、同じ手紙が他の人を殺すことはありません(再現性がない)。が、今回は決定論的ルールが基礎となっている宇宙なので、そういう珍しい手紙が確実に死をもたらすのです。

手紙を封印すればどうなるか?

ところで、この方法はどのくらい通用するのでしょう?たとえば、未来からやってきた手紙を誰にも見せずに封印すればどうなるでしょうか?ここでいう「誰にも見せずに」というのは、シミュレーション宇宙内の空気分子一つにすら影響を与えないほど厳重に封印するという意味です。

その場合、面白いことに、死の手紙は存在できません。手紙は周りの分子一つにすら影響を与えられないので、中に「お前は死ぬ」と書かれていようと「お前は生きる」と書かれていようと決定論的宇宙なので結果は同じです。犠牲者となるはずだった人はいつもどおりの生活を送るでしょう。死の手紙は見られてこそ効力を発揮します。周りに影響を与えられない未来からの情報は、未来を分岐させないのです。

このような状況で呪いの手紙シミュレーションを作ろうとしても、「解なし」になるのです。

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