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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

バネとNOTゲート

バネは、自分自身を入力につないだNOTゲートのように、振動します。両者の関係を見てみましょう。


NOTゲート

NOTゲートは入力を否定する電子部品です。1が入ってくると0が出ていき、0が入ってくると1が出ていきます。

もしかすると、「電気信号が入ってきていないときに電気信号が出ていくなら、これは電気が無から湧き出る永久機関なのだろうか?」と思うかもしれませんが、実際には、NOTゲートはこの図に描かれていない電力の供給源があり、信号が入ってこないときにはそのエネルギーを使って信号を出します。NOTゲートは永久機関ではありません!

さて、このような相手を否定する嫌なやつがいたら、こちらも同じくらい嫌なやつになりたくなります。つまり、自分に自分を否定させてやりたくなるものです。

これは面白いです。このゲートへの入力が1の時出力は0ですが、そうすると入力が0となり、出力は1とならなければいけません。そうすると入力が1となり…。この回路の状態は次のように振動するでしょう:

この回路に安定した状態はありません。常に自分を否定し続けるからです。あるいは、自分を否定し続ける状況で安定したとも言えますが。

これは一種の自己言及のパラドックスをシミュレートしているといえます。つまり、「クレタ人は皆嘘つきだ」とクレタ人が言った時それはウソなのかどうかとか、タイムマシンで過去に戻り自分のおじいさんが子供のときに殺したらどうなるか、の再現なのです。パラドックスが解決されれば、安定した状態で止まるでしょうが、そんなことはそもそも不可能なのです。止めるには回路を破壊するしかありません。「私以外のクレタ人は皆嘘つきだ」や、「おじいさんを殺そうとしたが直前で弾がそれて殺せなかった」でなければいけないのです。

バネ

バネも同様に振動します。ではバネに否定の要素はあるでしょうか?もちろんあります!バネには復元力があり、バネが伸びれば縮む力がかかり、バネが縮めば伸びる力がかかります。

バネは自身の歪みを否定しているといえます。伸びれば縮み、縮めば伸びます。だから振動するのです。バネとNOTゲートには共通点があるのです。

ということは、バネの振動も自己言及のパラドックスをシミュレートしていることになります。

「この文章は嘘だ」という文は、もし正しければ嘘になり、嘘なら正しくなります。正しいというのがバネの縮んだ状態で、嘘だというのをバネの伸びた状態と考えましょう。この文章が正しいかどうかを考えようとしたら、終わりのないループに入り込みますが、それがバネの振動と同じなのです。

そして、力によるバネの変形を、推論のシミュレーションと考えます。「この文章の内容が仮に正しいとしたら、それは何を意味するのだろうか?」という思考は、「バネのこの力は、バネをこれからどのように歪めるだろうか?」とう、物理法則が行っていることと同じです。両方とも現在から導き出される未来を考えているのです。バネに力がかかった時バネが動くのは、単なる物理現象に過ぎませんが、それを言うならわたしたちの思考だって単なる物理現象に過ぎません。ライプニッツは次のように述べています:

われわれがまるで魔法をかけられたように小さく縮められて、なにかを考えている人の脳の中に入れられたとすると、たくさんのポンプやピストンや歯車やてこがせわしなく動いている様が見えるだろう。そして、これらの働きを力学的用語で完璧に描写し、その結果、脳の思考プロセスを完璧に記述することができることになるだろう。ところがその記述のどこにも、思考について触れた箇所はないのだ!あるのは、ポンプとピストンとてこの話だけである。

というわけで、バネの振動が思考をしているというのは実に理にかなった話なのです!少なくとも、NOTゲートと同じくらいには。

空気抵抗

自分を否定することによって、振動するのではなく単に力が失われる場合もあります。たとえば空気抵抗がそれです。空気抵抗も速度の反対方向にかかりますが、速度は振動したりせず、単にどんどんゆっくりになって最後は止まるだけです。

どうしてこうなるのかというと、空気抵抗による速度の否定は、あまりに速度に速く反映されすぎるからです。バネの場合は歪みの反対方向に力がかかりますが、その力が即座に歪みに反映されることはありません。車が急に止まれないのとまさに全く同じ理由によって、バネも急に止まれず行き過ぎてしまい、ゆえに振動するのです。

次の図は、バネと空気抵抗の共通点と違いを表しています:

バネも空気抵抗も、物理法則は同じです。力(厳密に言うと加速度)が速度を変え、速度が位置を変えます。

違うのは、力を作り出す要因です。バネは歪んでいれば歪んでいるほど力が大きくなります――つまりバネ先端の位置によって力が決まります。いっぽう、空気抵抗は速ければ速いほど大きくなります――つまり速度によって力が決まっているのです。

図を眺めるとわかりますが、空気抵抗のほうが、ループが小さいのです。これが自分の否定の効果を即座にもたらすことになり、うつ病患者のようにどんどん弱くなっていくのです。いっぽう、バネの場合は自分の否定が効き出すのが少し遅れてからなので、自分の否定にちょっと熱が入りすぎてしまい、元気は失われないのです。

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