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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

時間逆転熱伝導のしくみ

ぬるい水の入ったコップは時間逆転すると、熱いお湯になるか冷たい水になるかそのままの温度でいるかのいずれかです。肉眼レベルでは異様な現象に見えますが、一つ一つの分子レベルでは、時間が逆転していないときと見分けがつかない普通の衝突しか起こっていません。


熱湯がぬるくなる

熱いお湯がぬるくなる様子を考えてみましょう。やかんから熱湯をコップに注ぐと、空気に冷やされて、最後には空気と同じ温度になります。これは、熱湯の速い水分子がコップの遅い分子にぶつかって、減速するからです。温度というのは結局、分子の運動にすぎませんから、減速するとぬるくなるのです。

衝突による減速を図で見てみましょう。同じ質量の粒子同士が正面衝突すると、速度が交換されます。速い粒子は遅く、遅い粒子は早くなるのです:

正面衝突でなく微妙にかする場合は、単純な速度の交換ではありませんが、それでもエネルギーの一部は移動し、速いものが遅くなったり、遅いものが速くなったりということがあります。

これがコップに注いだ熱湯がぬるくなる理由です。熱湯には速い分子がたくさんあるのですが、それらの持つ運動のエネルギーはコップや空気の分子に伝わり、水分子は遅くなりぬるくなるのです。最終的には全てが同じ温度になり安定します。分子一つ一つのレベルではまだ運動エネルギーに格差はあるものの、水分子がコップ分子を温めたかと思えばコップ分子が水分子を温め返して結局変わらなくなるのです。

ぬるい水が熱湯に!

では今の状況を時間逆転してみましょう。すると、奇妙極まりない現象になっていることがわかります。はじめは普通の温度の空気とぬるい水の入ったコップがあるだけなのですが、空気はなぜかコップの周りだけ熱くなり、コップは空気に熱せられていて、水は熱湯になっていくのです。一体何が起きているのでしょう?

分子一つ一つのレベルでは、衝突の法則は変わりません。同じ質量の速い分子と遅い分子が正面衝突すると、速度が交換されます。ここは全く変わりません。

違うのは、分子の配置です。なぜか、コップの周りに速い空気分子が集まり始めるのです。コップはというと、なぜか空気との境界部分に遅い分子が集まり始めます。そして衝突し、空気分子は減速し冷え、コップ分子は加速し熱くなるのです。今速い分子とか遅い分子とか言いましたが、それはコップには速い分子も遅い分子もあるからです。温度が高いと速い分子の割合が増えますが、冷たいものにも速い分子は少しはあります。要は割合の問題なのです。それが何故か都合の良すぎる場所に配置され、普通の分子衝突をし、コップは空気に暖められるのです。時間逆転現象は、分子の配置によって起きるのです。

これは実に面白い現象です。コップは熱せられているのですが、別に空気より冷たいわけではありません。実際には空気よりコップのほうが少し熱いのです。なのに、空気から熱を奪って勝手に熱くなっているのです。それはコップと空気の分子が接する場所では、コップ分子のほうが空気分子より遅くなっているからです。これはちょうど、お金持ちなのにお金を持っていないふりをして他人からお金を恵んでもらうクソ野郎と似ています。コップ自体は結構熱いのですが、空気分子と接している場所には遅い分子が集まっているので、可哀想にとエネルギーを分けてあげるのです。

ちなみに、時間逆転現象には熱湯化の他に冷水になるパターンも考えられます。この場合は今の話を単純に逆にして考えます。空気から見るとコップ表面の分子は熱く見えるのでコップから空気に熱が伝わるのですが、実はコップは内部に冷たい分子を隠し持っており、どんどん冷えていくのです。

というわけで、熱が伝わる現象を時間逆転すると奇妙極まりないですが、分子一つ一つの衝突を考えると、実は時間逆転していない普通の衝突しか起きていないのです。違うのは分子の配置であり、分子の配置が時間の流れを決めているといえます。

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