忍者ブログ

Memeplexes

プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

観測でランダムウォークのエントロピーを減らす

エントロピーは無知の尺度と解釈できるので、観測すると減ります。ではランダムウォークのエントロピーを減らしてみましょう。


デモプログラム

表示
操作

解説

このプログラムは観測によってランダムウォークのエントロピーを0にするデモです。[観測]ボタンを押すと、灰色の領域(ランダムうウォーク粒子が存在するかもしれない領域)が一点に収縮します。それに応じて右側の赤いグラフ(エントロピー)も0ビットになります。

エントロピーは観察者の無知の尺度といえます。ランダムウォークは観察者が目をはなしていると位置がよくわからなくなるので、エントロピーは増えていくわけです。ところが観察者がランダムウォークを再び観察すると無知はなくなり、エントロピーはふたたび0ビットになります。

興味深いのは、観察者はランダムウォークに全く手を触れていないのに、ランダムウォークの持つエントロピーが変えられているという点です。これが温度だとしたら異常としか言いようがありません。見ただけで水を凍らせることができたとしたら、それは超能力です。しかしエントロピーについてはこれは普通の現象なのです。エントロピーは現実の世界と観察者の見ている世界の違いが反映されるものだからです。(なので、同じ物体なのに観察者によってエントロピーが違うということはありえます。物知りな観察者ほど、見たもののエントロピーは低くなるわけです)

しかしそうすると、エントロピー増大の法則はどこへ言ったのでしょうか?見ただけでエントロピーが減るのなら、エントロピーは増大するというのは法則でもなんでもないことになります。じっさいには、この2つは矛盾しません。ランダムウォークのエントロピーは観察者から見れば減りますが、観察者の脳のエントロピーは増え、両者を合わせるとエントロピーはやはり増えるのです。

これは、ランダムウォーク粒子と観察者(観察者Aと呼ぶことにします)のほかに、二人目の観察者(観察者Bと呼ぶことにします)について考えるとわかりやすいです。観察をすれば、たしかに観察者Aにとってはランダムウォークのエントロピーは減ります。しかし観察者Bにとっては、ランダムウォークの粒子の状態はわからず、おまけに観察者Aの脳の状態にも未知の要素が増えてしまったことになります。つまり、「ランダムウォーク粒子+観察者A」をセットにして考えると、エントロピーは増大しているのです。エントロピー増大の法則は、宇宙全体のエントロピーは増大するという法則なので、局所的には破れていることはあるわけですね。

拍手[0回]

PR