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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

観測で過去のエントロピーを下げる

観測者が分子を観測すると分子の位置のエントロピーが減少する様子を時空図に描きます。エントロピーとは不確かさを表す数字なので、観測して位置をはっきりさせるとエントロピーは小さくなります。今回は、観測によって過去のエントロピーも減ることに注目します。


観測してはっきりさせる

操作方法

[↑]キーを押す:現在時刻を進めます。(キャンバスは、一度クリックしてからでないとキーボードの入力は受け付けません)

[↓]キーを押す:現在時刻を戻します。

マウスでキャンバスをクリック:現在時刻を指定します。

解説

このデモプログラムは、観測することによって粒子の位置のエントロピーが下がる様子を図示します。

左の大きな長方形は観測対象で、粒子(黒い丸)が一つはいった容器です。右の小さな長方形は観察者のメモリです。左の容器を観測した結果を右のメモリに格納します(コウモリが音で周囲を探るように、光を飛ばすことで容器の中の粒子を観測しているという設定です)。はじめ、粒子は左にあるのか右にあるのかわかりませんが、仕切りで区切って観測すれば左右どちらにあるのかわかります(この図では、下から2番めで仕切りを入れて、5番目で仕切りを外しています)。メモリは左の容器のミニチュア版なのです。

このプログラムでは現在時刻(緑色のおび)を自由に進めたり戻したりできます。マウスでクリックすると、現在時刻が変わります。現在時刻を上から3番目の「観測結果を知る」に移動して下さい。そうすると、現在のエントロピーが0になることがわかります。エントロピーとは不確かさの量なので、観測結果がわかっていれば、粒子が左右どちらにあるかの不確かさは0になるのです。

このプログラムの目玉は、過去や未来のエントロピーも表示してくれる点です。観測すると、現在のエントロピーが下がるのはもちろん、過去のエントロピーも下がります。というのも、過去は現在からある程度推測できるからです。今回の例では、分子が左右どちらの部屋にあるかは、現在も過去も変わりません(まあ、粒子が左から右へテレポートする奇跡が起きれば話は別ですが)。だから過去も、仕切られているかぎりエントロピーが0なのです。ただし、仕切る前はわかりません。粒子は熱のランダムな運動であちこち動き回るからです。

これは名探偵が犯行現場を詳しく調査するのと似ています。犯行を直接見ていなくても、現在の犯行現場を知ることで、過去の犯行の状況がある程度絞りこめるのです。とはいえ、どんな名探偵でも犯行現場の6,600万年前の様子を知ることはほぼ不可能でしょう。それが可能なのは、犯人が巨大隕石で、犯行の痕跡が長年に渡ってクレーターとして残るような、特別な場合のみなのです。

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