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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

2状態ベクトル形式をベイズで一般化する

量子力学の2状態ベクトル形式は、宇宙の終状態がすでに決定していて、それが時間をさかのぼって現在に影響を与えているという考え方です。真偽はさておき、この論理で遊んでみます。この考え方は、量子力学以外にも応用できそうです。「これから行うコイン投げの結果が表になるか裏になるかはすでに運命によって決定されている。まあその運命は誰も知らないので予測は不可能なのだが」というわけです。


時間逆転ランダムウォーク

驚くべきことに、私は以前、2状態ベクトル形式をベイズ確率を用いて書き換えたプログラムを、それと気づかずに作っていました。「時間逆転ランダムウォーク」です。

広がり集まる

時間逆転ランダムウォークとは?

普通のランダムウォークは次のように、行き先が決まっていないため広がっていく一方です:

一方、時間逆転ランダムウォークは、行き先が決まっているため、広がった後一点に集まります。あらゆる経路のうち、目的地に行かなかった経路は最初から存在しなかったことになるのです(ベイズ確率など知らないと思う人もいるかも知れませんが、やっているのは結局そういうことです):

過去と未来で現在が決まる

普通のランダムウォークは一点から広がっていくのですが、時間逆転ランダムウォークは一点に集まっていきます。(ここではスタート地点が一点しかないので広がった後集まりますが、もしランダムウォークたちのスタート地点が散らばっていたら集まる一方となり、逆再生動画のランダムウォークと数学的には同じになります。)

つまり、『広がり集まる』では、最初の状態と最後の状態が決定されていて、プログラムはその間を計算するのです。

2状態ベクトル形式

これは2状態ベクトル形式でも同じです。2状態ベクトル形式では宇宙の最初の状態と最後の状態がすでに決定されて、そこから現在を計算します。

過去からやってきた歴史ベクトルΨと、未来からやってくる運命ベクトルΦの2つがともに「これは現実だ」と主張する経路のみが現実の歴史となるのです。

数式の比較

ベイズ確率を使った式と2状態ベクトル形式の式を比較してみましょう。難しく思えるかもしれませんが、ここでやっていることはどちらも「目的地に行かなかった経路は最初から存在しなかったことになる」であり、それを小難しく書いているだけです。

なんだか白黒で無味乾燥としているので、色を付けてみましょう。

同じ色の部分はほとんど同じ意味です。このように、「ベイズの定理」の式と「アハラノフ・ベルグマン・レボウィッツの法則(2状態ベクトル形式の数式)」には共通した色の部分があることがわかります。結局この2つの式は、書き方が違うだけでほぼ同じものです。

運命ベクトルΦは何を表すのか?

この数式の比較から何が言えるでしょうか?一つには、これで運命ベクトルΦの厳密な意味がわかります。これは現在の宇宙が宇宙の終状態へたどり着く確率を表しているのです。

急いで補足しておくと、私がここで言っているのは、宇宙が今にも滅亡しそうだという話ではありません。そうではなく、宇宙の終状態が決まっているとしたら、長い年月を経た後、その終状態へたどり着ける確率の話です。

運命波動関数Φは現在の宇宙が正しい宇宙の終状態へたどり着く確率を表します。現在の宇宙の運命波動関数Φが「濃ければ」、たぶん正しい道筋を通っていますが、もし「薄ければ」、普通なら起こりえない奇跡が起きなければ正しい終わり方ができません(つまり、これから奇跡が起きるはずです)。もちろん正しい終状態などだれも知らないので、「正しい」とか「奇跡」とかいうのは言葉の綾です。

これは擬人化したたとえ話ですが、もし宇宙に意識があったとしたら、運命波動関数Φは「安心感」を表すと言えます。もし宇宙の運命波動関数Φが大きければ何もしなくても最終状態にたどり着けるため、宇宙はのんびりと寝転がってありきたりなことしかしません。ところが、運命波動関数Φが小さければ、宇宙は「焦って」奇跡を起こすようになるわけです。

ベイズで応用

ベイズを使うと2状態ベクトル形式の論理を、確率的な現象全てに応用することができます。(じっさい、アハラノフは2状態ベクトル形式が生物の進化や自由意志と関係があると思っているらしいので、これは私の早とちりではないと思います。)

半分冗談、半分本気で、私達の日常は次のように考えることができるでしょう。

目的を果たす

もし電車に乗り遅れそうなら、「ほらほら!電車に乗る運命波動関数が薄くなってるぞ!」と言い駅まで走ります。もし乗ることができたら「ふー運命通り電車に乗れたぞ」。乗りそこねたら「おや?電車に乗る運命だと思ったのに気のせいだったらしい。きっと次の電車に乗る運命だったんだな…」というわけです。

ジレンマ

運命波動関数の濃淡で自分がどう行動するかも理解できます。あなたがダイエット中だったとしましょう。あなたには昼食に2つの選択肢があります――野菜サラダかいかにも太りそうなラーメンです。「痩せた身体になる」という終状態からやってくる運命波動関数は、野菜サラダをあなたに勧めます。ラーメンより野菜サラダを食べるほうがやせる確率が高いからです。つまり、あなたが野菜サラダを食べている宇宙の運命波動関数は濃く、ラーメンの方の運命波動関数は薄いのです。人間は、運命波動関数が濃くなるように行動するわけです。

ところがこれにはジレンマがあります。人類の先祖は飢えと戦っていたため、カロリーのあるものをとろうとする運命波動関数を作り出す遺伝子が生き残っているはずです。そちらはラーメンの方にあなたを引っ張ろうとするでしょう。人が悩むのは、複数の運命波動関数のどちらに従えばよいのかわからないからなのです!

期限前の焦り

小学生が夏休みが終わる直前に宿題をやりだすのはなぜでしょう?それは、夏休みが始まったばかりの頃は、「夏休みの間に宿題をすべて終わらせる運命波動関数」は薄く拡散しきっていて、「宿題を今すぐやる」も「遊ぶ」もたいして濃さは変わらないからです。ようするに「後でやっても間に合いそうだ」ということです。

運命波動関数は時間がたつに連れて濃淡がはっきりしてきます(普通の波動関数とは逆です)。夏休みが終わる直前では、「宿題を今すぐやる」のほうがかなり濃くなるため、焦って机に向かうわけです。

妥協

あなたが小学生で、図工の時間にとても素晴らしい絵を完成させたいと思ったとしましょう。ところが、あなたは建物や乗り物などの無機物はうまく描けるものの、人は上手く描けません。あなたは人物画ではなく、風景画に人を小さく描くことになるでしょう。

こうなるのは、私達の行動が、未来を表す運命波動関数だけでなく、過去を表す歴史波動関数によっても決定されるからです。「とても素晴らしい絵を完成させる」運命波動関数はあなたに人物画を描いても風景画を描いてもいいよというのですが、あなたの歴史波動関数は、人物画を描くという選択肢をものすごく薄くします。よってあなたの取る行動は、風景画しかありえません。運命波動関数と歴史波動関数両方が濃い行動を、あなたはするからです。理想と現実というやつです。

この比喩は妥当か?

ここでは人の意思を「運命波動関数」という言葉で表現しましたが、こんなことしていいのでしょうか?普通に考えたらいいはずありません!運命波動関数は誰も知ることができないものなのです。この比喩は完全に間違っています。

とはいえ、この比喩はかなり直感に合うのも確かです。ということは、上の比喩で使われているのは運命波動関数そのものというより、「運命波動関数と似た性質を持つ別のなにか」と考えるべきでしょう。たぶん、それがベイズ確率なのです。脳がベイズを計算しているというのはメジャーな考え方ですからね。結局アハラノフさんは普通の主張をしているだけなのかもしれません…。

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