忍者ブログ

Memeplexes

プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

同期現象による適応

同期現象のシミュレーションはうねうねと動いていかにも生物らしいですが、これの実用的な応用手段について考えましょう。同期現象をうまく自分の生存に役立てるのです。


アメフラシのエラ引っ込め反射

同期現象が役に立つという例についてアメフラシのエラ引っ込め反射で考えてみます。

アメフラシという10~40センチほどの大きさの海の生き物がいます。2000年ノーベル賞受賞者のエリック・カンデルはアメフラシを筆でくすぐり、エラを引っ込めさせる実験を行いました。アメフラシにとってエラはそれなしでは生きていけない大切な器官なので、万が一を考え傷つかないように引っ込めます(もちろん、彼らは筆でくすぐられたくらいでは害がないと学習し、しだいにエラを引っ込めなくなります。…が、そのことについてここでは考えません)。

ここで重要なのは、筆とエラが同期しているという点です。筆でくすぐられたときはエラを引っ込め、くすぐられていないときはエラが出たままなのです。

これは理にかなっています。彼らは海中の酸素を取り込むため、できるだけエラを外に出していなければいけません。しかし、危険な何か(実験では筆ですが)がやってきたら、エラが傷つかないように引っ込めなければいけないのです。

ケースバイケースが知性を作り出す?

面白い話です。この話は知性とは何なのかということについてヒントを与えてくれそうです。もし、エラではなく脳の話をしているのなら、私達がそうしているように頭蓋骨で覆って守ればよいだけです。守るのに神経回路など必要ありません。

しかし、エラは脳と違って外部の酸素を取り入れなければいけませんから、普段は外部に露出していて、危険が迫ったときにのみ引っ込めなければいけないのです。エラには「酸素を取り込む」と「危険から逃れる」という2つの目的があるため、知的な情報処理を必要とするのです。私がプログラミングを覚えたのはもう大昔のことになりますが、場合によって動作が変わる構文(if文)を覚えた時、なんだか自分はすごいことをしているのだという実感があったことを覚えています。場合によって何をすべきか変わるというのが知性が生まれる条件かもしれません。繰り返しますが、ただ守ればいいだけなら硬い骨で覆えばよいのです。ニューロンなどいりません。

そういう意味では、私達の脳はアメフラシのエラよりも知的でないとすら言えるかもしれません。もちろん、人間の脳は筆でくすぐられるのより遥かに悪質な攻撃にも対処できるので、総合的には優れているわけですが。

ケースバイケースのための同期

こう考えると、同期とはケースバイケースで行動するためにあるのかもしれません。環境と脳を同期させるということは、環境の情報を脳に取り入れるということであり、それを元に行動するということは環境の状態に応じてケースバイケースで行動するということだからです。

実際、概日リズムは太陽と体内のリズムを同期させていると言えますし、それに応じて生物は行動しているわけです(「朝日が登るときに羽化せよ!そうでないときには羽化するな!」)。

また、ケースバイケースというのは、脳を支配しているとされているベイズ確率そのものです。ベイズ確率というのは「〇〇の時に□□となる確率」のことであり、ケースバイケースで決まる確率のことです。環境と脳を同期させて行動すれば、自然にベイズ確率を実装したことになりそうです。

以上のことから、同期現象はシミュレーションして楽しいというだけではなく実用性もありそうです。

拍手[0回]

PR