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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

臓器の寿命の同期

体内時計をはじめ、生物には様々な同期現象が見られます。臓器の寿命も例外ではありません。進化生物学によると、すべての臓器が、だいたい同じような時間で壊れるように進化するのです。


長持ちが良いとは限らない

こんな昔ばなしがあります(残念ながら作り話のようですが、そこから学ぶことはあります)。一般庶民むけに車を作っていた経営者が、自分の車に他の部品よりも長持ちしている部品を見つけました。その経営者は、その部品の質を落として、他の部品と同じくらいの時間で壊れるようにエンジニアに命じたのです。

これはある程度は理にかなっています。つまり、一般庶民のために車を作っているので、車は安ければ安いほどよいのです。他の部品より長持ちするということは、その部品に必要以上にコストが掛けられているということにほかなりません。庶民の手に届きやすい値段で提供するためには、他の部品の寿命を伸ばすより、長持ちした部品の寿命を短くしたほうが良いのです。

生物の臓器の寿命

進化生物学者達によると、生物の臓器の寿命も同じです。もし私達の臓器の中に1000年持つものがあったとします。すると自然淘汰は、その臓器をより低コストで作って100年程度の寿命にまで下げるでしょう。現在の人類はせいぜい100年程度しか生きることが出来ないので、1000年もつ臓器はいずれにせよ100年以上生き延びることが出来ません。質を落として、浮いた資源で子供を一人でも多く作ったほうが良いと判断されるでしょう。

つまり、生物のすべての器官は、ある意味個体の寿命を予測していると言えます。予測を間違えた遺伝子は淘汰されるのです。予測する寿命は短すぎても長すぎてもいけません。短すぎれば個体は若くして死に、長すぎればまだ機能している臓器が個体と一緒に死に資源の無駄となります。

寿命の同期

ここで起きていることは寿命の同期です。すべての臓器がだいたい同じ時間で駄目になるよう進化するのです。

とはいえ、「悪貨が良貨を駆逐する」などと悲観することはありません。さきほど「1000年持つ臓器の遺伝子は淘汰により排除される」というようなことを述べましたが、それは他の臓器がおおよそ100年でだめになるからであり、もし他のすべての臓器が1000年持つのなら、その遺伝子はむしろ成功するでしょう。そして排除されるのは、100年しか持たない臓器の遺伝子となるでしょう。1000年生きる人類の誕生です。

寿命の予測は外部に正解があるのではありません。臓器の遺伝子たちが予測を出し合って、多数派の予測が真実となるのです。「長持ちが良いとは限らない」というのは正しいですが、「長持ちが良い」と考えている集団のなかでは、やはり「長持ちが良い」のです。

まとめ

すべての臓器は同じくらいの時間で寿命が来るように淘汰圧がかかります。より長持ちする臓器はコスト削減のため寿命を短くして他の臓器と合わせたほうが良いわけです。これは同期現象の一つだとみなすことが出来ます。

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