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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

完璧な翻訳ソフトの満たすべき条件

もし日→英、英→日の完璧な翻訳ソフトがあったとしたら、それは日本語を英語に翻訳した後、英語を日本語に翻訳すると、元の文章に戻らなければいけません。


f^-1(f(x)) = x

わたしが高校生の頃の英語の先生は、日本語を英語に翻訳し、それをまた日本語に翻訳するという勉強法をしていたそうです(あるいは英語を日本語に翻訳し、それをまた英語に翻訳する、だったかもしれません。どちらだったかは思い出せません)。これは理にかなっています。もしニュアンスの翻訳し忘れがあったとしたら、元の文に一致しないはずだからです。不一致は翻訳ミスを意味しています。

完璧な翻訳ソフトはもとに戻る

これは完璧な翻訳ソフトというものがもしあったとしたら、それが満たすべき条件でもあります。文章の持つ意味を完璧に翻訳できたとしたら、それは再び元の言語に翻訳し直しても、文章は完全に一致するのです(下の図)。

このことは、翻訳ソフトの質を評価する方法の一つとなるでしょう。元の文との不一致を数値化するのです。

ただ、この考え方が万能というわけでもないかもしれません。というのも、2つの異なる言語感で完璧に意味を翻訳することがそもそも不可能である可能性があり、また、仮に可能であったとしても、完璧に意味を保存しようとすることによって読みにくい文章になる危険性もあるからです。もしかすると、このことは完璧な翻訳ソフトは存在しないという証明なのかもしれません。

ところで、こういう話になるとイヌイットの人は雪を表す語が400以上あるという話を思い出してしまうかもしれませんが、それは嘘です(『言語を生み出す本能』、スティーブン・ピンカー)。アメリカの人類学者フランツ・ボアズがイヌイットは互いに関連のない語根4つを使って雪を表すと言い、それをアメリカの言語学者ベンジャミン・リー・ウォーフが7つに増やし、転載に継ぐ転載による伝言ゲームで100以上に膨れ上がったというわけです。

というわけで、翻訳ソフトが膨大にある雪の単語を上手く翻訳できずに困るということはないでしょう。ただそれでも、言葉の持つ微妙な意味を翻訳のときに漏らしてしまう可能性はある、ということです。

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