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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

近未来vs遠未来タイムトラベル

物理学者たちは半分おふざけで、タイムトラベルを利用して難しい計算を素早く解くアルゴリズムをいくつか考案しています。私もその精神を見習い、タイムトラベルを悪用したいと思います。しかしそこで気になるのは、「タイムトラベラーはどの時代からやってくるべきか?」、ということです。計算に利用するのなら、タイムトラベラー(情報)はなるべく現在に近いほうが良いでしょう。その方が、コンピューターが不測の事態で壊れる可能性を排除できるからです。一兆年後の未来からタイムトラベラーがやってくるというのは、宇宙の未来を知りたいときにはすばらしいですが、実利的な計算に利用するときには、その間にずっとコンピュータが壊れないように見張らなければならないので大変です。このように、タイムトラベルを悪用する際、タイムトラベラーが近未来からやってきたほうがいい場合もあれば、遠い未来からやってきたほうが良い場合もあります。


スワンプ・ペガサス

タイムトラベル計算についてはこのブログでは散々取り扱ったので、別の例についても考えましょう。ペガサスの創造です。

今ここに、タイムトラベル可能な世界のシミュレーターがあったとします。私達はその世界に、翼の生えた馬の写真をセットします。その世界の住人から見ると、空中に突然ペガサスの写真が現れることになります。そうするとそのシミュレーターはそれを未来からタイムトラベルしてきた情報と解釈し、ペガサスを生み出そうとするでしょう(もしかするとその世界のマッドサイエンティストが馬と鳥を組み合わせるのかもしれません)。そしてそれを誰かが写真に取り、過去へ送るのです(シミュレーション的には単なる写真の削除です)。このようなシミュレーションを走らせるには非現実的な計算リソースが必要と思われますが、まあ思考実験なのでいいのです。

この時重要なのは、写真に記された日付です。もしその日付が数十億年後なら、私達がそのシミュレーション世界を眺めていても、なかなか興味深い現象は起きないでしょう。締切がだいぶ後だからです(ひょっとするとペガサスが自然な進化により生まれるのかもしれません)。しかし、もしその日付が10分後だとしたら、かなり超自然的な現象が期待できます。たぶん、沼に雷が落ちて、命のない分子があつまり偶然生きたペガサスになるのです。その様子はとても見応えがあるでしょう。つまり、超常現象を見たいのなら写真の日付は近いほうが良いのです。

タイムトラベル借金

一方で、タイムトラベラーが遠未来からやってきたほうが良い状況というのも確かに存在します。再びシミュレーション世界に介入する<宇宙の眼>を演じましょう。こんどは私達はシミュレーション世界の恵まれない人に一兆円分の金塊を与えます。その使いみちを見て楽しむのです。この場合もシミュレーション世界はその何の前触れもなく現れた金塊を未来からタイムトラベルして来た異物とみなし、過去へ送ろうとするでしょう。つまり、恵まれない人はその金塊を即刻宇宙に取り上げられるかもしれません。

これは私達の目的にはそぐわないものです。私達は今、不遇の人が幸運をどう活かすかというドラマを見たいのです。なのにすぐにもとの「正常」な状態に戻してもらわれては困ります。できれば1代で巨大企業を作り上げ、一兆円なくなったところで痛くも痒くもないくらい豊かになってから過去に送ってほしいものです。このように、遠未来からのタイムトラベルのほうが都合が良いこともあるわけです。

ペガサス再考

タイムトラベラーは近未来から来くるほうが良いこともあれば、遠未来からやって来る方が良いこともあります。さきほどペガサスが泥から作られるのを見たいときには近未来からのほうがいいと述べました。しかし、ペガサスの場合でさえ、遠未来からから来たほうが良いと考えることもできます。

数十億年後からペガサスの写真が送られてきた場合、そのペガサスが自然に進化した生物である可能性があります。たぶん隕石で生物がほとんど死に絶えた後、手足が3対ある生き物が現れペガサスへと進化したのです。写真を撮ったのは翼の生えた天使でしょう。

ここで注目すべきなのは、このペガサスは「一発屋」ではないということです。ペガサスは野生動物であり、安定した生態的地位を持っています。つまり、写真に取られたペガサスが誕生するだけでなく、そのあともペガサスが誕生し続けることが期待できます。シミュレーション宇宙はペガサスを作り続ける習慣を身に着けたのです。もしあなたがペガサスが安定供給される様子を見たいと思っていたなら、写真は遠未来からやってきたほうが良いのです。

写真が10分後からやってきた場合はこうはいきません。沼の分子からペガサスが作られるというのは一度きりの奇跡であり、二度目は期待できません。私達がここで直面しているのは、すぐにペガサスを一体もらうか、数十億年待ってたくさんのペガサスをもらうかという選択なのです。後者を選ぶことのできる自制心のある子供は将来大成するでしょう。ペガサス・テストです。

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