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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

ミーム理論による差別の解明

ミーム理論によると、文化は情報の複製によって進化するものであり、情報の複製は我々にとって欠かせないものです。しかしここでは、情報を正確に複製しようとすることこそが差別の原因であるということを指摘したいと思います。情報を正確に複製しようとすると、観測データに混ざるノイズを取り除かなければいけないのですが、そのプロセスが個人ではなくカテゴリーで人を判断することにつながるわけです。


情報の複製

ミーム理論が正しければ、情報の複製は、人間の精神活動の重要な要素の一つです。唯一の要素ではないかもしれませんが、「人間の精神をプログラムするにはどうすればいいか?」には答えるのが難しくても、「情報を複製するプログラムを作るにはどうすればいいか?」なら答えるのが簡単でしょう。物事を考えるには、はっきりしたことにのみ集中したほうがいいこともあります。というわけで、ここでは情報の複製だけに注目することにします。

ノイズ除去

ここでいう情報の複製とは、プログラムの中で変数をコピーするのとは少し違います。というのも、現実世界では、プログラムと違ってノイズが紛れ込むからです。会話には言い間違いがつきものですし、視覚だってホコリとか光のいたずらで微細な間違いが入り込むでしょう。それらのノイズを物ともせず、私達は他人の考えを理解したり、景色をデッサンしたりしなくてはいけません。現実世界では、情報はただ単にコピーすればいいものではなく、間違っていたときにそれを無視する必要があるのです。(ちなみに、プログラムも、それを実行しているハードウェアレベルではノイズと戦っているので、「ノイズが有るのが人間、ないのが機械」、というわけでもありません。)

多数決でノイズ除去する

ではもっとも簡単なノイズ除去方法について考えてみましょう。多数決です。複数のやり方で対象を観察し、一番多い結果を「正しい」観察結果とするのです。

あるコインの表裏を3台のカメラで観察した結果が表、表、裏ならたぶん表でしょう。最後の裏はたぶん光のいたずらで、本当は表なのに裏っぽく見えてしまっただけなのでしょう。

このやり方は正しいデータの取得率を劇的に向上させます。一つ一つのカメラが60%の正答率でしかなかったとしても、10台以上集めれば、計算上正答率は90%を超えます。

というわけで、ミーム理論的な情報の複製をするときは、対象を複数のやり方で観察して、一番多かった結果を複製する、というのが一つのやり方になりそうです。

実際、私達が何かを評価する時、一つの要素だけ見るのではなく、複数の要素を見て総合的に判断します。食べ物が美味しいかどうかは味だけでなく香りからも評価するので、鼻詰まりだと美味しく感じられないものです。生物学的にも、ニューロンの発火の仕組みは多数決とよく似ています。

例外の無視

この方法の欠点は、100%でないものを100%としてあつかうということにあります。多数決がいかに接戦であったとしても、一票でも上回ったほうの意見のみが生き残るのです。

今、あなたが知らない人に出会ったとしましょう。そうすると、あなたはその人を複数のやり方で評価します。性別、肌の色、国籍、…本当はその人個人がどのような人であるかを基準とすべきなのですが、出会ったばかりの状態ではその情報はほとんどないため、すぐに観察可能な情報のみからその人を評価することになります。特に性別と肌の色です。厳密に言うと、このわずかな情報だけからその人の評価を下すのには情報が足りなさそうなのですが、多数決には一番多い意見が100%になるという性質があるため、たやすく「この人種には~~という傾向がある」が「この人種は~~だ」になり「こいつはこの人種だから100%~~だ」となるのです!

それで我々はどうすべきか?

困ったことに、この考え方が正しければ、差別を引き起こすのは我々の認知機能の根底に埋め込まれているしくみだということになりそうです。これを覆すには「自分には差別をする心理など無い」と考えるよりも、差別をする心理が備わっている自覚をして、それを意識的に打ち消し続けるほうが上手くいくのではないかと思います。

まとめ

差別を引き起こすのは、ミーム理論的な情報の複製を行うシステムです。観測データからノイズを除去する仕組みがそのまま、個人に関する情報を無視させグループに関する情報のみを生き残らせます。これはあまりに我々の認知機能の奥深くに埋め込まれているので、それが無いふりをするより、意識して打ち消し続けるべきでしょう。

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