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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

時間逆転でかぼちゃを馬車にする

もし逆再生動画のような時間逆転現象を自由に起こせるとしたら、かぼちゃを馬車に変換できます。それどころか、任意のものを別の任意のものに変換することができます。


キツネを昆虫に進化させる

たしか進化生物学者リチャード・ドーキンス氏のアイデアだったと思うのですが、ある生物を全く似ても似つかない別の生物に進化させることは可能です。

ここでは、キツネを昆虫に進化させるとして考えましょう。キツネと昆虫には共通の先祖がいます。これはわたしたちとキツネに中生代の共通先祖がいるのと同じくらい確かなことです(それよりさらに昔に遡らなければいけませんが。結局地球上のすべての生物は一つの生物からスタートしたわけです)。ということは、キツネを、キツネと昆虫の共通祖先に進化させることは可能です。一世代ずつ、先祖に似ている個体を選択して品種改良していけば、気の遠くなるような地質学的な時間はかかるものの、何か原始的な生物に戻すことが出来るでしょう。ここで、時間の向きをもとに戻します。今度は、これを品種改良で昆虫に進化させるのです。これも膨大な時間がかかるものの可能です。じっさい、地球上で一度は起きたことなのです。

これが何を意味するのか考えてみると楽しいです。「虫は虫でもキツネから生まれた虫はな~んだ?」と聞かれたら、「それはキツネから進化した昆虫です。キツネをキツネと昆虫の共通先祖まで進化させ、それをさらに昆虫まで進化させた生命体です。」と答えることになるでしょう。それは分岐分類学上は哺乳類であるとともに、昆虫でもあるのです。

かぼちゃを馬車に変える

ではこのトリックを非生物を含むすべての物体にまで一般化してみましょう。炭素と水素でできた物は何であっても燃やせば二酸化炭素と水になるので、かぼちゃを燃やした後別の方向に時間逆転すれば、プラスチックでできた馬車に変えることが可能です。

キツネ虫トリックと矢印の上下が逆ですが、それはどうでも良いことです。いずれにせよ、重要なのは連続的な変化によってあるものを全く別のものに変化させるということなのです。そして、その途中でエントロピーは――無秩序さは――一時的に大きくなるでしょう。これは、SF映画『ターミネーター2』に出てくる液体金属ロボットT-1000を連想させます。T-1000は液体金属でできているのですが、表面を色んな色や形に変えることができ、様々な人間に化けることができます。普段T-1000は警官に化けているのですが、暗殺対象を油断させたいときにはその親しい人間に化けることもあります。そしてここからが重要なのですが、ある人物から別の人物に化ける時、一度色や形が銀色の流動的な液体金属に戻り、その後引き締まりながら人の形になるのです。これは明らかにかぼちゃ馬車トリックと原理が同じです。特殊化したものを何にでもなれるものに戻し、その後再び別方向への特殊化を行うのです。

最短の時間衝突経路

この技はありとあらゆるものを別のありとあらゆるものに変換する力を備えているものの、現実に行おうとすれば分子レベルの緻密な操作が必要です。効率的に行おうとすればなおさらです。あきらかに、時間の進めすぎはエネルギーの無駄遣いだからです。たとえば、木をチョコレートに変換することを考えてみましょう。この時、木を水と二酸化炭素にまで分解する必要はありません。木を形作る分子セルロースは、チョコレートの甘い成分であるブドウ糖を連結して作られているため、ブドウ糖より細かく分解する必要はないのです。次の図を見て下さい:

この図は、木をチョコレートに変換する2つの方法を表しています。左に描かれている方法は、木を二酸化炭素と水にまで分解しますが、もう片方の方法ではブドウ糖にまで分解したらそこからチョコレートを作ってしまいます。明らかに、右側のほうが効率的です――時間が速くて済みますし、エネルギーも少なくてすみます。左側にはブドウ糖を二酸化炭素と水に分解した後、またブドウ糖に戻すという無駄なプロセスがあるからです。

じっさい、わたしたちの体がやっているのはこういうことです。わたしたちは木をバリバリ食べて自分の体をチョコレートに変換することはありませんが、肉を食べた時それをアミノ酸に分解し、それを材料に自分の体を形作るわけです。アミノ酸は生物の共通部分なので、それ以上細かく分解する必要はないのです。

ボール位置の変換

理解の補助のために別の呆れるほどかんたんなケースを考えましょう。分子的な変換ではなく、ボールの移動で考えるのです。ボールをある場所から別の場所に移動したいと思った時、投げるのが一番手軽です。このときボールは放物線を描きますが、放物線は左右対称なので、あたかも2つの時間がぶつかっているかのようです。

この図は、ボールの●から◎への移動を表しています。このとき、2つの時間が軌道の頂上で衝突しています。ボールが投げられる時、時間は逆転しています。止まっているボールがいきなり飛び上がるなど時間が逆転していなければありえません。そして、ボールが地面に落ちる時、時間は通常の方向です。ボールの持っていた運動エネルギーは地面との衝突を通じて熱として逃げていくからです。私達が何気なく物を投げる時、実は時間の流れが切り替わっているのです。

まとめ

変身の魔法は、2つの異なった方向の時間を考えると科学的に理にかなったものになります。つまり、ある状態を別の状態に変えるためには、まず両者の時間の共通点にまで時間を変化させ、その後逆方向に時間を動かすのです。そうすればつなぎ目のない、なめらかな変身ができます。

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