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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

自己複製と未来予知

コンピュータ・サイエンスの非決定性チューリングマシンと生物学の自然淘汰の共通点について考察します。両方とも、自己複製して未来予知します。


非決定性チューリングマシン

非決定性チューリングマシンは、コンピュータサイエンスにおける思考実験モデルです。これは一種のコンピュータで、実際私達の持っているパソコンと全く同じ計算結果を出します。非決定性というと、答えが毎回違うように思えるかもしれませんがそうではありません。私達のコンピュータと同じように、非決定性チューリングマシンも1+1=2だと常に答えます。それなら単に「コンピュータ」と呼べばいいのではと思うかもしれませんが、実際にはある種の計算に限って実在のコンピュータよりすばやく解くことができます。たとえばある数を2つの素数の積に分解するのは現在のコンピュータではとても時間がかかり、そのことを利用して暗号は安全性を保っているのですが、非決定性チューリングマシンは一瞬にして解いてしまいます。もし非決定性チューリングマシンが実在したら、あなたがネットで行う秘密の通信は丸裸にされてしまうのです。

(量子コンピュータにより現在使われている暗号が解読されてしまうという話を連想したかもしれませんが、量子コンピュータは非決定性チューリングマシンではありません。なんと、非決定性チューリングマシンは量子コンピュータよりすごいのです。非決定性チューリングマシンは現実離れした性能の良さで、現実に作るにはタイムマシンが必要だとされています。量子コンピュータが実用化されても、非決定性チューリングマシンは理論上の存在であり続けるでしょう)

非決定性チューリングマシンはどうやって動くのか?

わたしがここで注目したいのは、非決定性チューリングマシンの理論的な動作方法です。これには2つの考え方があり、1つは未来視です。「自分は未来に計算が解ける」という未来が既に決定されていて、それが叶うように奇跡を連発しながら動作するというクレイジーな考え方です。奇跡を利用するので、難しい問題も当てずっぽうで「偶然」、あっという間に解けてしまうわけです。未来の影響を受けているので過去しか知らない人から見れば、途中経過は「非決定性」に見えるわけです――まあゴールは既に決定しているのですが。

もう一つの考え方は、より現実的で、計算のたびに分身するというものです(下のyoutube動画)。ほとんどの分身は問題を解くことができないでしょうが、1つくらいは正解にたどり着けるはずです。これはイカサマ預言者の手口に似ています。いかさま師のあなたは、じゃんけん大会の参加者全員に「君を優勝させてあげよう。そのかわりに優勝賞金の1割をくれないか?優勝できなかったらお金はいらない」と言うのです。そうすれば、あなたは必ずお金をもらえるでしょう。もちろんバレれば袋叩きにされるので、私は決してこの手口を推奨しているわけではありません。重要なのは、数が多ければ、その中で一人くらいは奇跡を連発しているかのように見える人がいるはずだ、という点です。奇跡の連発は自己複製で実現できるのです!

この話をわたしが初めて聞いたときのことを思い出します。私は1つめの考え方を聞いたとき、とても嫌な気分になりました。あたかも自分が未来に出す答えを知っているかのように動くというのは、堂々巡りにしか思えなかったからです。それよりは2つ目の考え方のほうが性に合いました。明らかに生物の自己複製と同じだからです。たくさん子孫を残せば、そのうち一匹くらいは生き残るという話と同じです。こちらのほうがより現実的だと思ったのです。

しかし今の私は1つ目の考え方も受け入れられるようになりました。というのも、これは明らかにタイムマシンで未来の情報を教えてもらった時の物事のふるまいと同じであり、私は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が大好きだからです。

自己複製と未来予知

自己複製と未来予知は出来ることが同じです。では具体的に両者はどう対応しているのでしょうか?

これは単純に、自己複製=「未来からの情報を受取る」です。次のように考えてみて下さい。明日の天気が晴れなのか雨なのか知りたいとします。あなたは2人に分裂します。明日は晴れだと思っているあなたと、雨だと思っているあなたです。次の日は晴れでした。雨だと思っていたあなたは陽の光を浴びた吸血鬼のように消滅します。結果として残るのは、予知を的中させたあなただけというわけです!

これはインチキだと思うかもしれません。あなたが2人に増えた段階では、片方の未来予知は必ず外れます。未来予知できたと言えるのは、翌日になって結果がわかってからであり、それならそもそも予知をする必要なんて無いのです。誰もあなたを天気予報士としては当てにはしないでしょう。二人のうちどちらを信じればいいのかわからないからです。はたして自己複製が未来予知だなどと言うことに意味はあるのでしょうか?

それはたしかにそうなのですが、分裂の方法によっては、あなたは本当に凄腕な天気予報士となりえます。2人に分裂する時、あなたが周囲の環境から未来を予想したとします。片方は「今日は雲ひとつないから明日も晴れだろうな」と思っていて、「今日は雲ひとつ無いけど明日は雨だろうな」と思っているのですが、前者の理屈のほうが正しそうです。そして、後者は消滅するので、論理的に物事を考えられるあなただけが生き残るのです。様々なデータから類推しながら分裂し消滅を繰り返せば、やがてあなたは分裂しなくても正しい天気を当てられるようになるでしょう。

つまり、自己複製自体は未来予知としてはインチキなのですが、自己複製を繰り返せば未来予知できているかのような能力が備わるわけです。これは自然淘汰そのものです。ハチドリは、生まれる前から自分が蜜を吸うことになる花を知っているかのようにくちばしを長く発達させます。これはハチドリに本物の未来予知能力が備わっているからではなく、自己複製&死の繰り返しにより、あたかも未来予知能力があるかのような力が備わっただけです。しかしまあ、私達の未来予測だって周りの環境との相互作用によって行うものですから、ハチドリのやってることは偽未来予知だと非難する必要はないでしょう。自己複製による未来予知は、真の未来予知に近づいている準未来予知みたいなものなのです。

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