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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて
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移動と自己複製には、危険があっても自分は死なずにすむという共通点があります。危険な場所から移動すれば死にませんし、マンボウのように子沢山なら危険があっても一匹は生き残るでしょう。このページでは、似ているところと違うところを整理します。
まずは危険な場所から移動するということがどういうことなのか理解します。
私達は熱いやかんに触れてしまったら、指が勝手に引っ込みます。そのままだとやけどしてしまい、死に繋がりかねないからです。もちろん、良く効く薬のある現在ならこの程度で死ぬことはほとんどないかもしれませんが、そういう恵まれた世界になったのはここ百年ほどです。それまでは山火事の後で熱の残った燃え残りに触れたりすれば火傷から感染症になりかねません。というわけで、生き延びたければ危険な状態からは逃げなければいけないのです。
「危険から逃げる」ということの本質を理解するために、話を次のように単純化してみましょう。宇宙に安全な場所と危険な場所の2箇所しかないと仮定します(もちろん現実の宇宙には無数の場所があり、安全とも危険とも判別しがたいところもたくさんありますが、本質の理解のためには話は可能な限り単純な方がいいのです。物理学者ジョークにあるように、「まず、牛を球と仮定します」)。危険から逃げるとは、危険な場所に行った時、安全な場所に移動するということを意味します。次の図はその様子を描いたものです。
あなた(上の図のニコニコマーク)が普段いるのは安全な場所です。というのも、そうでなかったらとっくの昔に死んでいるだろうからです。さて、ここでもし偶然強い風が吹いてあなたが危険地帯(現実宇宙で言うと、山火事の後でまだ熱がこもっているような場所です)に移動してしまったらどうでしょう?もしそこにずっといたら、死んでしまいます。そこで、あなたは元の居場所に戻ろうとします。息を吹きかけられたアリが踏ん張りその場所にとどまろうとするように、変化が起きたら戻ろうとするのです。
(もちろん、これは知的な情報処理です。風が吹かなければあなたは移動しようとはしないでしょう。風が吹いたことをセンサーで感知し、安全な場所に移動できるよう適切に情報処理して筋肉を動かしたのです。知性というのは、危険から逃げようとすれば自然と生まれるものです。)
面白いことに、生物の自己複製も似たような図です。多くの場合、生き物は複数の子供を残しますが、生き残るのは一部だけです。次の図は、自己複製による危険の回避を表しています。
この図では実際には「危険の回避」ができていません。危険なところに行った子孫は死んで、生き残ったのは偶然安全な場所にいた子孫です。しかし、危険により子孫が全滅するということは避られます。生贄付きの危険回避です。複製したという過程を無視して結果だけ見れば、危険を回避したのと同じです。
では上の2つの「危険の回避」を比較してみましょう。次のように、実は上の二つは確率が違うだけで同じものだと見なすことができます。
この図は移動と自己複製の比較です。この2つは似ています。最初に一つの状態、次に2つの状態、最後は1つの状態です。広がって集まるパターンを描くのです。
一方で、違う点もあります。途中の確率が違うのです。左の四角(つまり移動)に注目して下さい。移動は最初と最後の存在確率は1ですが、とちゅうで0.5の2つに分裂します。これは、「あなたは最初は安全な場所にいて、途中は危険な場所にいるかも知れないけれど、最後はちゃんと安全な場所に戻る」ということを意味しています(風が吹いてあなたが安全地帯から危険地帯に追いやられる確率を0.5とします)。
いっぽう、右の四角はもっと殺伐とした危険回避をします。あなたは2つに分裂し、危険地帯に行ったバージョンのあなたは死ぬのです!このとき、あなたの存在確率は2つとも1であることに注意して下さい。2人のあなたは客観的には実在する存在なのです。
移動も自己複製も、危険回避のときには「広がり集まる」パターンを描きますが、途中の確率が違うため、わたしたちの目には全く違う現象のように見えるのです。
これは面白い話です。この2つは、子供を少ししか残さない生き物と、子沢山な生き物の違いそのものです。子供を少ししか残さない生き物は、子供が生きて大人になる確率も高いです。というのもそうでなければとっくの昔に絶滅しているだろうからです。いっぽう、マンボウのように子沢山な生き物は、子供が生きて大人になる確率が低いです。というのもそうでなければとっくの昔に地球はマンボウの支配する惑星になっているだろうからです。前者は移動により危険を回避し、後者は自己複製により危険を回避しているのです。
この2つは知性の優劣も説明します。前者はかなり情報処理しなければいけませんが、後者はただの偶然によるくじびきです。前者のほうが知能が高いのです。もし知性について理解しようと思えば、移動について考えなければいけないわけです!