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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて
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ここまでシュレディンガー方程式の波動関数で量子力学を考えてきましたが、同じ結果を出す別の計算方法もあります。このページはその一つである経路積分についてです。
経路積分は量子力学の計算方法の一つで、シュレディンガー方程式を使って解くのと同じ計算結果が出せます。それならなぜシュレディンガー方程式だけで満足せずにわざわざ他の計算方法をやらなくちゃいけないんだめんどくさいじゃないかと思われるかもしれませんが、経路積分には大きな利点があります。経路積分は、物体が未来から過去へタイムトラベルするような、普通ならありえない状況でも計算できるほど応用が効くのです。じっさい、物理学者たちが冗談半分でタイムトラベルの「おじいさん殺しのパラドックス」について考えるとき、経路積分を使うのが常套手段です。そんな無茶苦茶な対象にすら適用可能というわけで、経路積分を知っていたほうがいいということは納得していただけたと思います!
経路積分とは、現在地からゴールまで状態が変化する確率を求める計算です。例えばあなたの目の前にボールがあったら、そのボールが1秒後床の上に転がっている確率を求めるようなものです。(「確率を求める」というのは波動関数の絶対値の二乗を求めるのと同じで、つまりまあ、似た者同士ということです)
経路積分の面白いところは、現在地からゴールまでの可能なすべての経路を考え、それらの影響を足し合わせるという点にあります。ここでいう「可能なすべての経路」というのは、あなたの目の前のボールが重力に引かれて床の上に落ちるとか、10センチジャンプして床の上に落ちるという経路だけではなく、あなたの目の前のボールが4.3光年先のアルファ・ケンタウリまで飛んでいき、3回宙返りをしたあと地球まで戻ってきて床の上に落ちるという非現実的に思える経路も含めます。経路積分ではそれらの可能なすべての経路たちにある種の「投票」をさせ、ゴールがどのくらい有り得そうかを計算するのです。
では試しに経路積分で波動関数を計算してみましょう。この2つは似た者同士なので、経路積分で古き良き波動関数の図を描くことができます。
[スタート]ボタン:シミュレーションをスタートします。
計算速度ふつう:普通の速度で経路積分をシミュレートします。計算の様子がよく見えるでしょう。
計算速度速い:早送りで経路積分をシミュレートします。のろくてじれったいときにこれにチェックを入れてください。
スタートボタンを押してください。経路積分によって波動関数が描かれます。ここで行われている計算は、以前やった1次元空間の中の粒子のシュレディンガー方程式です。つまり、一箇所にまとまった波が、広がりゆく様子を計算しているのです。
ここまで、経路積分の具体的な計算方法について述べてきませんでした。しかしご安心ください!やるだけなら10歳の子供にさえできるほど簡単です。
経路積分はある種の「投票」だと述べました。「可能なすべての経路」が投票権を持った人々であり、ある未来が現実になる確率を投票で決めるのです。普通の投票と違うのは、投票用紙に「賛成」か「反対」かを書くのではなく、たんにどこかの方向を向いた矢印を描くことです。
経路達は自分たちの書いた矢印が賛成なのか反対なのか知りません。というのも、「他の経路と同じような方向の矢印」が「賛成」であり、「他の経路と逆の方向」が「反対」票だからです。つまり、集計するまで誰が賛成で誰が反対しているのかわからないというわけです。
この票の集計が、上のシミュレーションで見るS字形の図形です。各矢印をつなげて、合計がより遠くまで伸びているほど確率は大きくなるのです。もしすべての経路が同じ方向の矢印を書けば真っ直ぐに伸びるので確率は最大になるでしょうが、すべての経路がてんでバラバラの方向の矢印を書けば、矢印は打ち消し合って確率はほとんどゼロになるでしょう。
これが経路積分です。波動関数との対応をもう少し言っておくと、同じ方向の矢印が波の強め愛で、ばらばらの方向の矢印が波の打ち消し合いです。
ここまで擬人化した言い方を続けてきましたが、投票用紙に描ける矢印の方向は、ちゃんとした法則によって定まります。速く動いていればいるほど、矢印はたくさん回転するのです。もうちょっと正確に言うと、矢印の角度は、速さの2乗に比例します。
シミュレーションを見ていただければわかりますが、より遠くへ移動する経路は、より速いということなので、たくさん矢印が回転しています(よって他の経路と打ち消し合いやすくなります)。
逆に全く動かない経路は回転もしません。ほとんど動かない経路たちは同じような方向の矢印が重なるため、矢印の合計も真っすぐ伸び、存在確率が多くなるのです。つまり、ある場所の粒子は、次の瞬間もその場所にある確率が最も高いということになります(ただし、確率の雲は広がっているので、ずれた場所にある確率もあるというわけです)。
ちなみに、この1マス上に移動する時の矢印の回転を物理学者たちは「ラグランジアン」という難しそうな名前で呼んでいます…がこれはこけおどしにすぎません!「ラグランジアンが大きい」と言われたら、それは「矢印をいっぱい回転させる」ということなのです。これはあくまで小学校低学年レベルの算数なのです!
量子力学の計算方法には、波動関数だけでなく経路積分を用いたやり方もあります。経路積分はスタートからゴールまで変化する確率を求める計算方法です。
スタートとゴールの間の可能なすべての経路に投票権をあたえ、それらの結果をまとめ上げゴールが現実となる確率を計算します。各経路は「賛成/反対」を投票するのではなく、「どこかの方向を向いた矢印」を投票します。ゴールが現実になる確率を計算するには、それらの矢印をつなげ、根元から先端までの長さ2を2乗します。各経路が同じような矢印を投票すればゴールが現実になる確率は高いですが、バラバラな矢印を投票していれば、ゴールが現実になる確率はゼロに近いでしょう。