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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

ワン・リジュンの光パルス・タイムマシンのシミュレーション

2000年、NEC研究所の物理学者ワン・リジュンさんは光パルスのタイムトラベルに成功しました。なんと光パルスが、セシウムガスの詰まった箱から入る前に出てくるのです!もっとも、残念ながらこのやり方で情報のタイムトラベルは不可能なのですが…。


箱に入る前に出てくる

ワン・リジュンの光パルス・タイムマシンのシミュレーションを作りました。光パルス(高い山)が、セシウムガスの箱(灰色の領域)に入る前にそこから出てきます。

何が起きているのか?

このシミュレーションだけでは何が起きているのかよくわからないかもしれません。そこで、全体像を表す図を用意しました:

これがワン・リジュンの光パルスタイムマシンの全体像です。光パルスはセシウムガスの箱に入ると時をさかのぼり、過去の箱から出てくるのです。

シミュレーションを眺めていると、まず最初に一つだけパルスが現れ、その後3つのパルスになり、最後はまた一つになるということがわかると思います。この図を見れば、なぜ途中で3つのパルスが出てくるのかが理解していただけると思います。一つはタイムトラベル前のパルス。2つめはタイムトラベル中の時間逆行パルス、3つ目はタイムトラベル後のパルスなのです。

ちなみにこれは私が以前書いたジョークプログラム「タイムトラベル手紙」にとても良く似ています!また、時間を逆行するパルスは、「光より早い光パルス」シミュレーションで確認できます。

どうしてこうなるのか?

しかしセシウムガスの箱がどうしてタイムマシンになるのでしょう?古代の人々が亀の甲羅を焼いて予言をしたように、現代人はセシウムガスで未来から情報を受け取れるとでも言うのでしょうか?もちろん違います!!ここで重要なセシウムガスの特性は「波長の短い光ほど速く移動する」です(シミュレーションを見てください。真空中では短い波長の波の方が箱の中ではすばやく移動します)。青い光が赤い光より速く移動するということが、タイムトラベルの秘訣なのです。

光パルスとは?

さて、タイムトラベルの詳細を解説する前に、光パルスとはなんだったか復習しておく必要があります。光には次の図ようにいろんな波長のものがあります。これらを足し合わせると山と山が重なったとても高い山が出来るのです。これが光パルスの正体です。

 

 

最後の図の白い斜線がパルスです。いろんな波の山が全てそこに重なっているため、とても高い山が出来ているのです。一方で、そこ以外は山と谷が互いに打ち消し合ってあまり起伏がありません。ともかく、山の重なりこそが光パルスの正体なのです。

分解と合成によるタイムトラベル

これでタイムトラベルのしくみを理解する準備は整いました!次の図が光パルス・タイムトラベルのしくみです。光パルスを過去へ送るためには、未来の光パルスを分解し、過去で光パルスを合成すればいいのです!

これが光パルス・タイムトラベルの正体を表す図です。光パルスとはいろんな波の山が重なり合ってできているので、山をずらしてやれば光パルスは消滅します。そして、ズレた山をあわせてやれば光パルスがそこに生まれるのです。

この光パルスの合成・分解をするために、波たちの速度を変更します。この図のセシウムガス中では、赤い光ほど遅く、青い光ほど早くなっていることがわかります(縦に近い赤い線は遅く、それより横に傾いた青い線は速いです)。こうすることで、光パルスは過去で焦点が合い、未来でぼやけるようになるのです。

まとめ

ワン・リージュンさんの光パルス・タイムマシンは、光パルスが入る前に出てくる不思議な箱です。その箱がやっていることは単に波長によって光の速度を変えているだけです。こんな箱を光が通過すると、ピントの合っていたところでぼやけ、ぼやけていたところでピントが合います。つまりこのタイムマシンでは、未来の光パルスはぼやけ、過去でピントが合い、タイムトラベルしたように見えるわけです。

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