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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

化学振動子は何故元の状態に戻るのか

このシミュレーションで化学物質の量が同じパターンを繰り返す理由を考察します。


化学振動

上のページでは、化学物質の量が何度も振動します。そのたびに以前の値と同じになります。

同じ状態に戻るので、グラフにすると丸いループになります。円の上を何度も何度も回り続けます。

バネのエネルギー保存

ひとつ目の考え方は、これをバネの振動とみなし、エネルギーが保存するから全く同じ状態に戻ってくるのだと解釈することです。

この化学振動子とバネの振動は数学的には全く同じです。Aがバネが伸びる速度でBがバネの伸び(長さ)です。

上の図でいうとエネルギーは中心からの距離の2乗を2で割った数です。エネルギーを一定にしながら動かすということは、つまり中心からの距離を一定に保ちながら線を引いていくということで、円が描かれるのはあたりまえといえます。

状態と動き

それにしても化学物質の量を速度として考えるというのはなんとも奇妙な話です。Bの量は現在の「状態」であるのに対し、バネの速度は「動き」です。状態を動きでたとえているのです。こんなことをしても良いのでしょうか?

しかし状態と動きを結びつけるというのは実はそれほど珍しい話ではありません。車の速度メーターは現在の車の「動き」を、針の位置という「状態」に変換しています。一方で、電気の使用メーターは、いま消費している電力量が一定でも回転し続ける、という意味で「状態」を「動き」に変換しているといえます。両者にはちゃんと関係があり、片方をもう片方で例えても問題ないのです。なんならAを「バネの伸びる速度」ではなく、「バネの伸びる速度を表示するメーターの針の位置」としてやれば動きではなく状態になります。結局状態だの動きだのいう話は解釈しだいでどうにでもなります!

なぜエネルギーは保存するのか?

しかしなぜエネルギーは保存するのでしょう?数式で理解するのは簡単ですが、あえて言葉で考えてみましょう(舐めプみたいなもんです)。

世の中に出回っているお金のように、お互いが単に交換するだけというのなら、全体として一定に保たれるということはわかります(銀行が増刷したり、金持ちが明かりとして燃やしたりするケースを除いて)。ところが今回のケースでは、Aが減った分=Bが増えた分というわけではありません。明らかにこの2つは違っています。

この図だとBが増えた量はAが減った量より大きいです(A軸上から左上に移動)。一見、何も保存していないように見えます。

種明かしをすると「エネルギーが保存されている」とはこのケースで言うと「中心からの距離が保存されている」なので問題ないのですが、具体的に一体何がAからBに渡されているのでしょう?Aの持っている何かが減り、それと同じ分Bが持っているそれが増えなければいけません。たしかに中心からの距離で説明できることは説明できますが、AとBの持っている何かを合わせて話してしまうことになり、個々の物質が何を失い何を得たのか考える上ではジャマになります。物事は様々な視点から眺めたいものです。物理学者のリチャード・ファインマンさんも2つ以上の説明ができるようになってはじめて理解したと言えるのだみたいなことを言っていますからね。

というわけで、不完全でも良いのでいろんな考え方をやってみましょう。

多い方をえこひいき

上の図にふたたび注目してみましょう。「Aが減った量」は少なく、「Bが増えた量」は多いですが、前者を何らかの方法でえこひいきしてやれば、両者は同じ量になりそうです。えこひいきというと聞こえは悪いですが、一貫してえこひいきするのならそれほど悪いものではありません。サッカーのキーパーは手でボールを触れるというえこひいきをされていますが、それは両チームに適用されるえこひいきなので公平なえこひいきなのです。さて、AとB両者に適用されるえこひいきとはどのようなものであるべきでしょうか?

いま考えている状態だとAをえこひいきし、Bはあまりえこひいきしません。一体何がえこひいきの発動条件なのでしょう?ぱっと見て、スタート地点ではAが多く、Bは皆無です。ですから物質の量が多いほどえこひいきされやすいと考えることが出来ます。

「保存される「何か(=エネルギー)」は、物質の量が置ければ多いほど割増しされて勘定される」

この話を元に、当てずっぽうのあやふやな議論でもエネルギーの式を導けるか試してみましょう(舐めプです)!物質が多いほどエネルギー変化は割増されるのなら、こういう式ができそうです(あやふやな議論):

ある物質の量が変わった時の「エネルギー」の変化 = その物質の量 × その物質の量の変化

※ここで言う「エネルギー」とは「ガソリンやATPにはたくさんのエネルギーが含まれている」というようなほんとうのエネルギーの話ではなく、バネのたとえ話の中でのみ通用する、バネが持っているエネルギーのことです。

さてこの式を使うと、ある物質の「エネルギー」が計算でき、こうなります:

ある物質の「エネルギー」 = (1 / 2) × その物質の量^2

これは正しい式です。ということはあやふや議論でもちゃんと正しい答えが出せたというわけです!やった!舐めプ成功です!

まあフェアに考えると、最初のあやふや議論で考えた式はこうすることもでき、その時には誤った結論が出てしまいます:

ある物質の量が変わった時の「エネルギー」の変化 = その物質の量 + その物質の量の変化
ある物質の量が変わった時の「エネルギー」の変化 = sqrt(その物質の量) × その物質の量の変化
ある物質の量が変わった時の「エネルギー」の変化 = exp(その物質の量) × その物質の量の変化
ある物質の量が変わった時の「エネルギー」の変化 = その物質の量^100 × その物質の量の変化
...
(以下無数に間違った式が考えられる)

今回は正しい結果が出ましたが、あやふやに考えるときは気をつけたいものです。

なぜ多い方をえこひいきしなければいけないのか?

多い方をえこひいき!! 式としてはそうなるのでしょうが、何故そんなことをしなければいけないのでしょう?正義の味方は弱い方をえこひいきするのではないのでしょうか?これでは独占企業に支配された世界のようです!

まあまじめに考えるとしても、エントロピーはすでに温かいものを熱してもあまり増えませんから、エントロピーとは逆です。エントロピーは少ないほうがえこひいきされるわけです。こうしてみるとエントロピーとエネルギーの違いがどこから出てきたのか知りたくなります。

もちろんその答えは、「エネルギーの変化を割合で考えるとエントロピーと同じになる」です。動いているものと動いていないもの両方を同じだけ加速したとすると、すでに動いているもののほうがエネルギーの増加は多くなります。しかし、あらかじめ持っていたエネルギーとの比率で考えると、小さくなるのです。いわば海にひとさじの水を加えたところでほとんど何も変わらないというのと同じで、割合で考えるとエントロピーと同じく、「少ないほうがえこひいきされる」わけです。なにしろ停止した物体の運動エネルギーは0で、それと比べるとどんなにすっとろい速度でも無限倍のエネルギーを持っているといえますからね。最初の速度が大きければ増えるエネルギーの絶対量も多くなりますが、そもそも最初のエネルギー自体がとても大きいので、増加した比率は小さくなるのです。

化学反応で考えると

以上の話は間違ってはいないですが、具体性があまりないので、ここではちゃんと2種類の物質の化学反応を考えましょう。

「多い方をえこひいきしてエネルギーを考える」とはどういうことかというと、Aが100、Bが0混ざったコップが2つあった場合、片方にAを1入れもう片方にBを1入れると前者のほうが「エネルギー」が多くなるということです(繰り返しますが、この「エネルギー」とは分子の持つ本物のエネルギーのことではなく、化学反応をバネの振動の比喩で考えた時バネが持っているエネルギーのことです)。AはBを作り、BはAを分解するときこうなるのです。

しかしどうしてAを入れたほうが「エネルギー」が多くなるのでしょう?100が101になったからといってなんだというのでしょうか?逆に0が1になったほうが大きな違いのような気がしませんか?にもかかわらず、100が101になったほうがエネルギー増加が大きく、0が1になった方はほとんどエネルギーは増加しないのです。

このことはこう考えることが出来ます:「時間を進めたり逆再生したりしたときに再現できるなら、エネルギー増加はない」。さっきの例で言うと、Bが0から1になったというのは、単に時間を少し進めれば再現できるものなのです。AはBを作る物質なので、Aが100個も入ってるコップがあれば、ほっとけばBが1つくらいはできるでしょう。そしてB(Aを分解する能力を持つ)は1つしか無いので、Aの減少分はほとんど0に等しいのです。時間を進めればBを0から1にすることは簡単にできるので、エネルギー増加はほぼ0です。

ところがAを100から101にするというのは時間をどう動かしても不可能です。Aの量を変える能力を持つのはBですが、Bは今0しかないからです。これではAを変えようと思えば外部からAを1加えるしかありません。保存則を破る必要があるのです。

まあ厳密にいえば、Bが0→1となるケースでもAはほんの僅かに減っているので保存則は厳密には破れているのですが、Aを100→101にする方と比べると微々たるものです。というわけで、100→101より0→1のほうが「エネルギー」の変化は少ないわけです。

「エネルギー」の変化とは、「その状態を作るのに外部から何かしてやらなければいけない手間の大変さ」と考えてよいでしょう。Bを0から1にするのは放っといても出来ます。でもAを100から101にするのは放っといたら無理です。

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