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プログラミング、3DCGとその他いろいろについて

時間逆転ボールの登山とおもり付きばねの振動

おもりの付いたバネの振動は、おもりを無視すると、バネがかってに伸びる(あるいは縮む)という奇妙な時間逆転現象に見えます。なら、そのバネの動きには、時間逆転ボールが山にのぼる現象(時間逆転した落下)と共通点があるはずです。このページでは、両者のどの要素がどう対応するかを確認します。


おもりを無視した場合のバネの振動

次の図のように、ものすごく透明な素材(ガラスよりもっと透明!)でできているおもりがついたバネは、あたかも勝手に伸びる(あるいは縮む)ように見えます。バネ単独なら素早く振動しますが、重りによって動きがゆっくりになっているので、なにか見えない力によって動かされているかのような(事実そうなのですが)不気味な現象に見えます。

時間逆転ボール

逆再生動画の中でボールが2つの山のあいだにあったら、ボールはどちらかを登るでしょう(あるいはそのままじっとしているかもしれませんが、それはバネだって同じことです)。

共通点

両者に共通しているのは、エネルギーを増やしているという点です。バネは通常の長さより伸びたり縮んだりすると、バネの力によるエネルギーがたまり、ボールは高いところに登ると重力によるエネルギーがたまるのです。

このエネルギーは無から生まれたものではなく、見えないところからもらったのです。バネの場合は透明なおもりの運動エネルギーをもらっており、ボールは周囲の環境のランダムな分子運動からエネルギーをもらっています。

見えないところ

この「見えないところ」というのは重要な概念です。というのも、人が自由に使えるエネルギーというのは、見えるところにあるエネルギーだからです。もし誰に目にも見えない(その上さわっても感触がない)電池があったとしたら、それをリモコンにセットすることはできません。

さらに、エントロピーというのは、見えないところにある情報です。運動した時摩擦で空気中に熱が逃げるとエントロピーが高くなるのは、見える運動が、小さすぎて見えない運動に化けてしまったからです。わたしが「ものすごく透明なおもり」などという概念を持ち出したのは、見えないところにあるエネルギーを頭にイメージしやすくするために過ぎません。

量子コンピュータの研究者にしてタイムトラベルの論文を書いたこともあるセス・ロイドは次のように言っています:

物質を原子のスケールで見れば、原子があらゆる方向にランダムにダンスしたり振動したりしているのが見えるはずだ。この原子のランダムなダンスを引き起こしているエネルギーが熱であり、そのダンスのステップを決めている情報は”エントロピー”と呼ばれる。もっと単純に言うと、エントロピーとは、原子や分子のランダムな運動(小さすぎて我々には見えない)を記述するのに必要な情報のことだ。エントロピーは、われわれの目に見えない物理系に含まれる情報である

エントロピー増大の法則とは、情報はどんどん見えないところに逃げてしまうという意味です。犯人が犯罪の証拠を燃やしてしまうのは、証拠を見えないところに逃がすためです。宇宙の情報自体は減らないのですが、見えなくなってしまったのです。

時間が逆転すると、見えないところからエネルギーが集まってきて見えるようになるという、オカルトすれすれの現象が起きます。時間逆転すると隠れていたものが顕在化するのです。上の2つの例では、バネにしろボールにしろ未来に2つの選択肢がありますが、それは隠れているおもりの運動や熱による分子運動を見えるようにするには2つの方法があるということを意味しています。不可視のおもりは左か右のどちらかに動いており、その動きがバネの未来を決めます。熱、ランダムな分子運動は、ランダムであるものの微妙に歪んでおり、その歪みによって左の山に登るか右の山に登るかが決まるのです。時間逆転すると一見2パターンに増えているように見えますが、じっさいは見えないところのパターンが減っているのです。

対応関係

最後に、2つの要素の対応関係を表にします。

時間逆転ボール 見えないおもり付きバネ
見えないところからエネルギーをもらうもの ボール バネ
未来1 ボールが左の山に登る バネが縮む
未来2 ボールが右の山に登る バネが伸びる
未来を決めるもの 分子のランダムな運動(あまりに小さいので目に見えない) 透明なおもり(あまりにも透明なので目に見えない)

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