タイムトラベルで時間逆転をシミュレートする

コンピュータは他のコンピュータを完璧に真似ることができます（ただし、時間はよりかかるかもしれません。「完璧に真似るとは」計算結果が全くおなじになるという意味です。）。これと同じように、ある現象で別の現象を真似ることを考えてみましょう。わたしがここで言っているのはSF的な時間が逆転した逆再生世界とタイムトラベルです。時間の逆転したノートには未来のことが書かれているので、宇宙の一部分を時間逆転させればタイムトラベルをシミュレートできます。ではタイムトラベルで時間逆転をシミュレートさせることは出来るのでしょうか？

タイムトラベルでエントロピーの減少

逆再生動画の世界では、無知や無秩序さの指標であるエントロピーは減少しています。普通割れた花瓶が勝手にもとに戻ることはありませんが、逆再生動画では破片が集まって花瓶になります。勝手に秩序が生まれるのです。

ではタイムトラベルで無秩序さが減ることはあり得るでしょうか？ある意味ありえます。未来の情報を知っていたら、世界がそれに近づいていくように思えるでしょう。そうでなければそれぞれが勝手に動いているように見えたはずの世界も、何か１つの目標に向かっているように（主観的には）見えるはずです。このとき、未来の状態に近づくまではエントロピーは下がる事がありえます。

タイムマシンで花瓶をもとに戻すことはできないかもしれませんが、未来を過去と同じような確かな存在にする事はできます。そうなったとき、現在から未来へ行くことは、現在から過去へ行くのとあまり変わらなくなり、それは時間逆転とあまり変わらないというわけです。

タイムトラベルでエネルギーを増やす

逆再生動画の世界では、二酸化炭素と水が燃えてガソリンになることがあります。つまり、無からエネルギーが生まれるというわけで、もし時間を逆転させる魔法が使えたら、エネルギー問題はたちまち解決するでしょう！では、タイムトラベルで無からエネルギーを取り出すようなことは可能でしょうか？

期限付きで可能です。未来からガソリンタンクを持ってきたら、現在から見るとガソリンが無から生まれたように感じるでしょう。もっとも、そのガソリンはいずれ返さなくてはいけないのですが。

これは借金のようなものです。タイムトラベルでは未来から何かを現在に持ってくることはできますが、結局自分でそれを過去に送る必要があるのです。プラスマイナス０です。

しかし悲観することはありません！各国の政府が日常的に行っているトリックが使えます。借金を無限にし続けるのです。つまり、明日の自分からガソリンを１リットルもらい、明日は明後日の自分から２リットルもらい…ということを繰り返せば、一日１リットル自由に使えます。たしかに、借りた分はいつかは返さなくてはいけないのですが、もし不老不死になってこのプロセスを無限に繰り返せるようになれば問題は解決します！もちろん不老不死になる技術は未来から送ってもらうのです！

タイムトラベルと時間逆転の違い

このように考えると、タイムトラベルと時間逆転の違いがわかります。時間逆転はビッグバンまで長く続く奇跡の連続ですが、タイムトラベルは期限付きの奇跡なのです。タイムトラベルでは、一時的に未来が過去と同じくらい確かなものになりますが、予言が的中した後の出来事はわかりません。未来からエネルギーをもらえるかもしれませんが、いずれ返さなくてはいけません。

しかしこの２つはあくまで時間スケールの違いに過ぎないのかもしれません。永遠の借金のようなことができれば（借金について言えば、じっさいは途中で銀行が金を貸してくれなくなるでしょう）、タイムトラベルと時間逆転はかなり似たものとなるはずです。タイムトラベルによる奇跡が期限付きだとしても、その期限を永遠に伸ばし続ければ、時間逆転とほぼ同じです。この２つは「違いはなにか？」と考えなければならないほどには似ているわけです。